コラム

ひとみさんのアメリカ留学レポート (その2)

<ひとみさんより4月その3>

 昨日はアジアンマーケットに食材を買いに行き、台湾人の友達の家で火鍋を食べました。久しぶりにおいしいご飯を食べれて大満足でした。


  アジアンマーケットにて


 台湾人の友達が何人かいるのですが、「釣魚島についてどう思うか。」と言われました。最初はなんのことだか分からずに、ポカンとしていたのですが、聞いてみていると尖閣諸島のことかと分かりました。
 意見を求められたのですが、「それはお互いの国にとって大事なものであるから、難しい」みたいなことを言ってごまかしたのですが、「まだDiscussionするレベルではないんだね。」と言われ少し悔しい思いをしました。

 英語のレベルはともかく、あまりにも無知であることに気がつきました。なんとなく問題があることは知っていましたが、「私はこう思う!」と言えるような情報量はとてもありませんでした。
台湾人の方がこの問題に関して敏感のようです。(韓国の竹島問題と同じように)、そして、インターネットで調べてみたところ、さらに複雑だと思いました。

 高田先生はどう思いますか。
 外国人と仲良くして、その国のことをよく知ることは大事ですが、その国と日本との問題もよく知っておかなければいけないということを学びました。


<高田よりひとみさんへ4月その2>

 日々いろいろ貴重な体験をしているようですね。

 日本では「台湾の人は親日的な人が多い」と漠然と思っている人が多いようですが、領土問題などの利害が絡んでくると、そんな単純ではありません。そういうことを契機に、日本が周囲からどんな目で見られているかということが、わかってきます。

 領土問題については、ぼくにも思い出があります。大学3年の春に初めて、学生友好訪中団を組織して中国へ行って、武漢大学の学生と交流会をしたとき、武漢大の学生たちから、「私たちも、あなた方の北方領土返還運動を応援します」と言われ、びっくりした記憶があります。
 そのころの中国は、ソ連と対立していて、そのこともあって日本との友好を推進していました。だから、日本の北方4島を占領するソ連は日中共通の敵と強調したかったのでしょう。ところが、ぼくらからすれば、日中友好と北方領土問題とは全く関係なく、ましてや北方領土問題をことさら煽る人々に違和感があったので、「日本では、北方領土問題はそんなに切実な問題ではない」と言ったら、キョトンとされた記憶があります。

 隣国とのあいだに領土問題があるということは、知っておくべきです。ただ、それをどう考えるのか。無知を恥じ、領有権を問題にする人たちが存在することを知っておく必要はありますが、だからといって、自分も日本の「国益」を代表して、「日本の立場」を主張しなければならないというわけではありません。
 ぼくなんかは、小さな領土をめぐって、緊張関係を醸成し、さらに軍事的衝突を招くとしたら、それは「国益」の追求といえるのか、対立を煽ることは誰にとって利益なのか、と考えてしまいます。

 武漢大の話に戻すと、当時は中国政府も北方領土のことは問題にしても、尖閣諸島のことは全く問題にしてなかったのですから、こうした問題は、その時々の政治情勢によって煽られたり、逆に不問にされたりする、きわめて政治的な問題だということがわかります。
 でも領土問題はひとたびもめると、政府の公式見解としては、立場上譲歩しづらいし、マスコミが大きく報道すると、あたかも国民がみな積極的に領土確保を求めているかのように見えます。すると双方が疑心暗鬼になり、ますます対立感情が高まっていくことになります。

 ひとみさんには、議論するほどの知識がなかったとのことですが、それで黙ってしまうのではなく、「無知な自分が例外的なのではなく、日本の多くの若者にとって尖閣諸島は遠い存在で、あなた方がそんなに問題にすることがわからない」と、逆に問いかけてみてもよかったのではないでしょうか。

 領土問題に限らず、歴史認識のこととか、これからもいろいろ尋ねられることと思います。ぼくも留学中、日本の大臣が暴言を吐くたびに、「あの発言をどう思うか」と、よく尋ねられました。

 これを機に、日本のことも考えてみてください。

                                           (その3へ続く

一覧のページに戻る