各研究テーマ

研究プロジェクト1

科学研究費補助金基盤研究B「中国の権威主義体制下における法の役割と限界についての比較研究」

(2019~2022年度、鈴木賢研究代表)

「競争的国家資本主義経済+非競争的超権威主義政治」というカップリングのもと、「抑 圧的法」が支配する中国にあって、制度的複合体としての法が、現実にいかなる役割を果た しているか、そしてそれにはいかなる現実的意義があり、また限界があるのかを明らかにす る。その上で「抑圧的法」が、「自律的法」ないし「応答的法」へ移行、変容するための条 件ないし可能性について以下二つの視角から検討する。一つは文化的伝統が類似する東アジ ア3国(台湾、韓国、シンガポール)の権威主義法との比較であり、もう一つは中国法内部 に萌芽的に生じつつある「自律的法」生成の胎動に対する分析である。具体的には、①中国 の「抑圧的法」にはいかなる独自性あるのか、②現在生じつつある「自律的法」の萌芽、発 展の兆しとその可能性はいかなるものか、そして③中国型「抑圧的法」は今後も中国の発展 を支えうるのかに回答を与える。

研究プロジェクト2

科学研究費補助金挑戦的萌芽研究「台湾/中国における性的マイノリティをめぐる法環境の構造——日本法への示唆を求めて」

(2014~2016年度、鈴木賢研究代表)

性別特例法の制定・施行・見直しや性的マイノリティの可視化が進む中、婚外子の相続分差別違憲判決が出され、日本でも多様な家族を認める傾向が見られる。性的マイノリティの法的問題の研究は欧米に偏っていたが、本研究では儒教的家族倫理を共有し、非キリスト教文化圏にある台湾、中国に焦点をあてて、以下の諸点をめぐる社会的・学術的言説、社会・政治運動、法実践(立法、司法)の歴史、現状の特徴を明らかにし、将来を展望する。

研究プロジェクト3

科学研究費補助金基盤研究A「中国における習近平時代の労働社会――労働運動をめぐる法・政治・経済体制のゆくえ」

(2016~2019年度、石井知章研究代表)

グローバリゼーションにともなう市場経済の急激な発展により、中国でも非正規雇用の拡大、雇用の不安定化が拡大していった。こうした労働者の過半数は、都市の農民工、レイオフ労働者、失業者といった社会的弱者であり、ホンダのストライキ(2010年)に見られるように、官製労働運動とはまったく異なった、一連の非正規労使紛争を呼び起こしている。これまで官製労組(中華全国総工会)の支配下にあった「個別的」労使関係は、習近平体制の下、「集団的」労使関係へと変化している。この二つの労働運動の生起は、法、政治、経済体制にいかなるインパクトを与えるのか。官製労組という一枚岩システムは、市場経済に適合的なのか。労働NGOはこれにどう対応し、官製労組はいかなる態度をとっているのか。本研究は、中華全国総工会と労働NGOとの関係の解明を通し、労働社会における根源的局面を明らかにする。