オセアニア Oceania


地域概説

■オセアニア(大洋州)とはおおよそ南太平洋の島々のことをいう。オセアニアはメラネシア(黒い島々)、ミクロネシア(小さな島々)、ポリネシア(たくさんの島々)の三地域に分けられる。ヘスペロネシア(西の島々)はむしろ東南アジアの島嶼部として東南アジア地域の一部とみなし、オセアニアには含めないのががふつうである。

■言語人類学的な意味でオセアニアというときには、オーストロネシア語族オセアニア語派の分布域を指し示す。オーストラリアとニューギニアの先住民はオーストロネシア系の人々よりもはるかに古くから居住していた別系統の民族グループなので、この場合のオセアニアには含めない。

マリアナ諸島におけるラッテ文化の遺跡、ラッテ・ストーン。(グアム島)

■オセアニアの島々はほぼ南北の回帰線に挟まれた赤道地帯に分布しており、熱帯雨林気候帯に属する。

■漁撈とタロイモ、ヤムイモなどの根菜農耕が主たる生業で、ヘスペロネシアの多くの地域のように中国由来の稲作やインド文化が伝わらなかった地域でもある。この点で、西部ミクロネシアのパラオ、チャモロなどの人々は系統的にはヘスペロネシア系であるが、文化的にはオセアニア文化圏に含めて考えられる。

■その他、メラネシア〜ミクロネシアではビンロウヤシの実、ミクロネシア東部〜ポリネシアではカヴァの根から作られる茶が象徴的な嗜好品として用いられている。(→南洋の茶道

海上都市、ナン・マトル遺跡。
(ミクロネシア・ポーンペイ島)

■西部ミクロネシアのヘスペロネシア系の人々は比較的古い時代に移住してきた人々だが、それ以外のオセアニア系の人々は、人類学的にはかなり新しい時代に広大な領域に急速に拡散していった(→オセアニアの歴史地図)。これは彼らの高度な航海術によるところが大きい。

■社会構造を出自の規則からみると、メラネシア〜ミクロネシアでは母系社会が多く、ポリネシアは選系社会が多い。伝統的な政治組織としては部族社会〜首長制社会で、あまり強大な王権は発達しなかったが、マリアナ諸島のラッテ・ストーン、ポーンペイ島のナン・マトル、イースター島のモアイなどの遺跡は、かつて栄えた巨石文化の名残をとどめている。また、交換を重んじる社会が多く、ヤップ島の石貨などの「原始貨幣」が現役で流通しているのも特徴である。(→ヤップ島の経済学

■「大航海時代」以降、オセアニアの島々は欧米諸国や日本の支配下に置かれたが、第二次大戦後はそれぞれの歴史的事情をかかえながら多くの地域が独立国家としての道を歩み始めている。

(2005-10-08修正/文・映像:蛭川立)

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