「茶」のバリエーション Psychotropic Plants for the Ceremonies and Rituals


作用による
分類

関連する
神経伝達物質

主要有効成分

植物名
伝統的に使用されている地域
学名
通称
興奮剤
アセチルコリン

アレコリン

Areca catechu

ビンロウ

東南アジア〜ミクロネシア

ニコチン

Nicotiana spp.

タバコ

北米〜南米

アデノシン
カフェイン
その他の
キサンチン
アルカロイド

Coffea arabica

コーヒー

東アフリカ

Camellia sinensis

チャ(茶)

東〜南アジア

Cola spp.

コラ(コーラ)

西アフリカ

Theobroma cacao

カカオ

中米〜南米

Ilex paraguensis

マテ

中米〜南米

ドーパミン
ノルアドレナリン

エフェドリン

Ephedra sinca

マオウ

中国

D-ノルプソイドエフェドリン

Catha edulis

カート

東アフリカ

コカイン

Erythroxylun coca

コカ

アンデス

興奮剤的な
サイケデリックス
(幻覚剤)

ミリスチシン

Myristica fragrans

ナツメグ

東南アジア

メスカリン

Lophophora williamsii

ウバタマ
ペヨーテ

北米〜メキシコ中部

Trichocerus pachanoi

サン・ペドロ

中央アンデス

セロトニン
(5-HT)
エルギン
(d-リセルグ酸アミド)

Ipomoea violacea

バドー・ネグロ

メキシコ南部

Turbina corymbosa

オロリウキ

メキシコ南部

Claviceps purpurea

バッカクキン

ヨーロッパ

シロシン
(4-ヒドロキシ-DMT)
シロシビン
(O-ホスホ-4-ヒドロキシ-DMT)

Psilocybe spp.

シビレタケ

メキシコ南部

Conocybe spp.

コガサタケ

メキシコ南部

Panaeolus spp.

ヒカゲタケ

メキシコ南部

イボガイン

Tabernanthe iboga

イボガ

ギニア湾岸

DMT
(N,N-ジメチルトリプタミン)

Anadenanthera spp.

ヨポ、コホバ

カリブ海〜
オリノコ川流域

Virola spp.

エペナ

アマゾン上流〜
オリノコ川上流域

Psychotria catharginensis

チャクルーナ

アマゾン上流域

Banisteriopsis spp.

アヤワスカ
ヤヘ
カーピ

アマゾン上流域

MAO
(モノアミンオキシダーゼ阻害剤)

ハルミン
ハルマリン

抑制剤的な
サイケデリックス
(幻覚剤)

アナンダミド

THC
(テトラヒドロカンナビノール)

Cannabis spp.

アサ(麻)

南アジア〜中東

アセチルコリン
スコポラミン
その他の
トロパン
アルカロイド

Atropa belladonna

セイヨウハシリドコロ、ベラドンナ

ヨーロッパ〜近東

Madragora officinarum

コイナス
マンダラケ

ヨーロッパ〜近東

Datura spp.

チョウセンアサガオ、ダツラ

アフリカ、西〜南アジア、北米〜中米

Brugmansia spp.

フロリポンディオ

アンデス

GABA
(γ-アミノ酪酸)

イボテン酸
ムッシモール

Amanita muscaria

ベニテングタケ

シベリア

カヴァラクトン類

Piper methysticum

カヴァ、シャカオ

ポリネシア〜ミクロネシア

抑制剤

エタノール

(いろいろな植物から造られる)

(酒)

(世界中)

エンドルフィン類

モルヒネ
コデイン

Papaver somniferum

ケシ

ヨーロッパ〜中東〜南アジア


■古今東西、人類は世界各地で、意識状態に作用する成分を含む薬草を伝統的に用いてきた。その有効成分は生化学的には興奮剤・サイケデリックス psychedelics ・抑制剤に分類され、それぞれ脳内で機能している神経伝達物質と似た構造を持ち、その働きを強めたり阻害したりする作用を持つ。

■この分類の中ではとくにサイケデリックスを含む植物が、超自然界との交流のために儀礼的に用いられてきた。サイケデリックスはまた幻覚剤とも呼ばれるが、儀礼の中で人々が出会う超自然的存在は、その文化の文脈の中ではリアルな存在であり、「幻覚」と呼ぶのはあまり適切ではない。

■また、興奮作用を持つ植物は、ふつう日常的な嗜好品として用いられてきたが、日本における茶などのように、儀礼的な使用にまで発展したものもある。

■逆に、これらの植物の中には、ある文化の中では汚らわしく邪悪な存在に分類され、その使用が規範からの逸脱であると見なされるものもあるが、その「民俗分類」は必ずしも自然科学的な安全性・危険性とは一致しない(どんなものでも量と使いかた次第で毒にも薬にもなるものだ)。それよりもむしろ、ある文化がある植物を、聖なるもの/日常的なもの/穢れたもの、と分類するのは、その文化の中での象徴的意味によってエミック emic に決まっており、また時代によっても変動する。近代国家における法律も科学的な分類というよりは民俗分類に近い(→向精神薬の危険性と違法性

■また、近代社会では超自然的なものの文化的な位置づけが希薄になり、これらの植物を、儀礼的な文脈を無視して使用したり、また技術が進歩したゆえに有効成分だけを抽出してそれを注射器で直接血管に注入するなど、生理的な作用だけを強化しようとしたり、さらには類似の構造で、より強い効果が得られる物質を人工合成することによって、逆に薬物乱用という問題を悪化させる結果になっている。

(2005-10-17 修正 蛭川立)

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