■二元論を複数組み合わせることによって、三個以上の分類ができるようになる。ちょうど、二進数で2桁以上使うと2以上の数か表せるのと同じ理屈である。ただし、二進数と違って象徴的な記号は有徴
marked な方がさらに二分割されていくという非対称性を持つのがふつうである。
■たとえば、スペイン語で人間一般=男 senor を「男/女」に分類すると女のほうが有徴で、「女」を示す「a」がついて、senor-a ができる。さらに、「女」を「既婚(大人)/未婚(子供)」に分類すると、小さいものを意味する「it」が間に入って、senor-it-a
という概念ができる。このような分類体系は、女が婚姻によって交換される父系社会、ないし男性のみが複数の配偶者を持つことができる一夫多妻制などの社会制度と結びつけて解釈される(事の是非はともかく)。
男性
senor- |
既婚女性
-a |
既
婚
↑
↓
未
婚 |
未婚女性
-it- |
男 ←→ 女 |
|
■人間がこのような認識(認知)を行う背景には、脳が二項対立の繰り返しで情報を処理しているというハードウエア的なメカニズムがあるものと思われる。人間が色の三原色を認識する場合、まず「短波長(青)/長波長」の差異が認識され、さらに長波長がもう一度「短波長(緑)/長波長(赤)」に分節されるという二段構えの情報処理が行われる。
青 |
緑 |
長
↑
波長
↓
短 |
赤 |
短 ← 波長 → 長 |
|
■象徴的三元論のひとつの特殊なケースが聖/俗/穢の三元論である。象徴的二元論は基本的に文化/自然=日常/非日常(=無徴/有徴)という構造から成り立っている。この非日常の領域はふつう、文化に対して劣位に置かれるが、特殊な状況では反転して優位に立つ。こうして日常の領域の外部に聖性が顕現する。