ベルヌイ試行と二項分布


まず、0と1という二つの値が半々の確率であらわれる、もっとも単純な試行(ベルヌイ試行)から考えていく。乱数発生器から生成される値はふつう0と1が半々で、ベルヌイ試行の典型例でもある。コインを投げて、表が出れば「1」、裏なら「0」としてもいいし、サイコロの偶数を「0」、奇数を「1」としてもいい。

この、半々の確率を、わざと行列のように描くと
数式
となる。これは、この試行を1回行ったときに「1」が出る回数、と読み替えることもできる。(「0」が出る回数でも同じことなのだが、ここでは仮に「1」が出る回数のほうで話を進める。)

一般に、この試行をn回繰り返した場合、「1」がx回出る確率を考えてみる。上の式はn=1の場合で、さらにn=2, 3, 4の場合を列挙すると
数式???? 数式   数式
という形になる。このあたりから、一般的なパターンを類推してみる。

たとえば、4回の試行、n=4で、「1」が1回も出ない、つまり0回出る、x=0の場合、4回の試行のパターンは
(0, 0, 0, 0)
の1通りしかない。

次に、「1」が1回だけ出る、x=1の場合、試行パターンは、1が最初に出るか、2回目に出るか、3回目か、最後か
(1, 0, 0, 0), (0, 1, 0, 0), (0, 0, 1, 0), (0, 0, 0, 1)
の4通りがありうる。

さらに、x=2の場合になると、全部を列挙するのは難しくなってくるので、すこし具体的に、1と印刷された2枚のカードと、0と印刷された2枚のカードの、合計4枚を並べる場合の数を考えると、
4!=4・3・2・1=24通りになる。
しかし、1と印刷された2枚のカードのどちらが先に来るかは区別しないので、この値を、その並べかたの場合の数
2!=2・1=2
で割り、さらに0と印刷された2枚のカードのどちらが先に来るかも区別しないので、その並べかたの場合の数
2!=2・1=2
でも割る必要がある。したがって、x=2の場合の試行パターンは、
数式通りとなる。

ここから議論を一般化すると、n回の試行で「1」がx回出る場合の数は、カードの比喩でいうと、n枚全部を並べる場合の数がn!で、これを、x枚の「1」の並び順、x!と、残りの(n-x)枚の「0」の並び順、(n-x)!の両方で割った数で、式にまとめると
数式
通りとなる。

そして、n回の試行で「1」がx回出る確率は、ひとつひとつの確率と場合の数をかけ合わせて
数式
となる。これが、二項分布 binomial ditribution である。また、n回の試行で「1」がx回「以下」出る確率は、0回からk回までの各々の確率を足し合わせたもので、
数式
となる。







(2006/2549-05-30 蛭川 立