宗廟の見学
宗廟は、儒学を統治思想として建国した朝鮮王朝が歴代国王と王妃、そして死後称号を贈られた王と王妃の位牌を祀り、祭祀を執り行った場である。
正殿と永寧殿に代表される建物は、荘厳であり、祭礼の場にふさわしい形で建設されていた。
1時限目:「韓日古典文学比較研究の課題と展望」(印權煥先生 高麗大学校:名誉教授)
同講義では、韓日比較研究として「観音説話の比較」、「高麗禅詩と五山文学」、「高麗僧伝流疏と元亨釈書」、「口碑伝承」の4点をメインテーマとして展開された。
結論となる問題点として「研究領域の拡大」、「日韓相互の資料研究」、「中国を媒介しての日韓比較」、「モンゴル、チベット、シベリヤ、タイ、ベトナム、インドなど汎アジアの観点での比較研究」、「文学作品だけでなく、歴史・文化・社会などを読み解き、研究に援用する姿勢」などを挙げておられた。
2時限目:「韓国における漢字文化と漢文学」(沈慶昊先生 高麗大学校:漢文学科教授)
同講義では韓国・朝鮮の漢字文化と漢文学の歴史を通史的に説明していただいた。朝鮮における漢文の種類、また沈先生のご専門である李王朝時代の漢文学、朱子学についての内容が詳細になされた。
加えて、日本と韓国・朝鮮の漢文学を通した比較を示された。その中では、日本の遣唐使をはじめした中国文化の摂取と韓国・朝鮮の比較、また日本の江戸期における儒学の展開と李王朝の朱子学のイデオロギー化について説明された。
3、4時限目:「パンソリの鑑賞と美意識」(金基珩先生 高麗大学校:国語国文学科教授)
:パンソリの鑑賞
金先生による講義では、パンソリについて、パンソリを構成する要素、パンソリの音楽性(声音など)、パンソリの演目などの観点からご説明いただいた。
講義の後、パンソリ『沈清伝』の実演が行われた。
1時限目:「平安文学と韓国古典文学 道成寺説話をめぐって」(日向一雅先生 明治大学教授)
同講義では道成寺説話について、『大日本国法華験記』、『三国遺事』、『大東韻府群玉』、『大智度論』、『宋高僧伝』また『法華経』などの比較により、日本と韓国の仏教説話の比較、受容の相違について述べられた。
2時限目:「韓国の絵画」(趙ギュウヒ先生:ソウル大学講師)
同講義では韓国の絵画史について通史的な説明があった。日本と同様に中国の影響が強いことを指摘され、また日本の江戸時代の絵画が通信使等を介した李王朝時代の絵画に多くの影響を負っていることが示された。
3、4時限目:国立中央博物館見学
同博物館は個人行動であったが、私は朝鮮の考古遺物、朝鮮絵画、仏像などを中心に見学した。日韓両国とも中国をバックグラウンドに置きながら、異なる享受が行われたことが実際に確認された。
1時限目:「近代以前の韓国の国家儀礼」(沈勝求先生 韓国体育大学:教養教職課程部教授)
同講義では、儒教儀礼の基本である家礼(個人と家政を規制する)と王朝礼(国家・王室に準行する)の区分から、講義の主要テーマである国家儀礼について説明された。特に1392年から1897年における朝鮮時代に定着した『国朝五礼儀』(成宗5年/1474年に整備)について、吉礼、嘉礼、賓礼、軍礼、凶礼のそれぞれにブレイクダウンして示され、また沈先生が中心になって朝鮮時代の国家儀礼の復元が行われていることを述べられた。
2時限目:「韓国の仏教」(趙性澤先生 高麗大学校:哲学科教授)
同講義では“A brief history of Korea Buddism”“East Asia Background”“The Characteristic of Korea Buddist”の3パートの構成で展開された。“A brief history of Korea Buddism”では三国時代、統一新羅、高麗、李氏朝鮮のそれぞれの時代における仏教の展開について述べられた。“East Asia Background”では、特に日本との共通点―大乗仏教の浸透―など東アジアの仏教の普及について示された。“The Characteristic of Korea Buddist”では、韓国・朝鮮の仏教が「通仏教」の形で広がり、イデオロギッシュな形では仏教が普及しなかったとし、それを儒教国家である韓国・朝鮮の仏教の状況であるとされた。
3、4時限目:景福宮見学
李氏朝鮮の開祖である李成桂の1394年に漢陽遷都、それに伴い風水思想に基づき建築された王宮が景福宮である。左右対称の設計など儒教思想に則った建築様式が見られる。現在は復元の途上であるため、建物もまだ少なかったが、李氏朝鮮の王宮の姿が多少は受け止められたと思う。
1時限目:「水原華城の建設の意味」(金俊爀先生 京畿文化研究所:研究員)
同講義では華城の建設の概要等を説明された。華城は李氏朝鮮22代国王である正祖が、1789年に建設開始、目的は党争によって亡くなった思悼世子の霊を朝鮮最高の吉地に移そうとする父親への孝と建築物による権力の誇示で王権を強化しようとする意図のもとで建設された、とのことである。
また、正祖は賢君として知られ、華城の建設の際にも科学器機を用いた効率化、技術工と雑役夫に対する賃金の支払い、など為民政策が遂行されたことについても述べられていた。
2、3、4時限目:水原華城見学
水原華城は城塞都市としての佇まいを示しており、日本の城とは大きく異なるが、それは文化的、政治的背景の差異にもつながると思われた。また、華城は朝鮮、中国、日本の城郭の長所が含められていて、ハイブリッドな文化による産物であることを実感することができた。
1時限目:「韓国の出版」(姜順愛 漢城大学校:知識情報学部教授)
2時限目:高麗大学校 漢籍室にて漢籍調査
同講義では韓国の印刷文化について、通史的に説明された。高麗時代には官版本と呼ばれる木版印刷が発展し、それは李氏朝鮮にも引き継がれて、韓国の出版文化のレベルを押し上げることになったとのことである。
また、2時限目は姜先生の説明による高麗大学貴重書の閲覧であり、15世紀の印刷物等を見ることができた。
3時限目:「韓国の巫俗」(洪泰漢 中央大学校国楽教育大学院:待遇教授)
同講義では韓国のシャーマニズム(グッ)について、現代の状況を中心に実際のグッの映像を鑑賞しながら説明を受けた。
韓国の巫俗には降神巫と世襲巫の二つの系統があり、それぞれに特色があることが分かった。また、私が注目したのはパンソリとの関係、パンソリを演ずる家系とシャーマンの家系の関連などから、シャーマニズム(グッ)がパンソリの起源とも考えられるとのことであった。
4時限目:韓国の文化に関する討論会
明治大学大学院生が今回の高麗大学プログラムの感想、成果をそれぞれ発表し、高麗大学大学院生と質疑応答を行うという形であり、大変実り多いものであった。