『GUEST』の計量分析〜新編集長の抱負に代えて〜 西川伸一 * 『Quest』第35号(2005年1月) はからずも、というよりは、はかられて、2005年度の『QUEST』編集長を務めることとなった。前任者から編集長としての抱負を書くようにとの執筆依頼である。これを機会に『QUEST』とはいかなる雑誌なのか、印象論ではなく計量分析でそれを明らかにしてみようと考えた。そこから浮かび上がる『QUEST』の性格を踏まえて、誌面の一層の充実を目指すというのが、新編集長の責務であろう。 計量分析といっても、私が行ったことは単純なことである。エクセルを立ち上げて、縦軸にこれまでの『QUEST』の執筆者全員の氏名を号数順に投入していき、横軸には既刊34号までの番号を入れていった。そして、その執筆者が寄稿した該当号のセルに丸印を付けていったのである。(おれもヒマだな・・) その結果、いろいろなことがわかった。まず、執筆者の寄稿頻度である。そのベストテンは以下のとおりである。(「声」は除く。「編集長」の肩書きで執筆したものも算入した。同点者の配列は五十音順。囲み数字は6頁以上の長論文)
私も堂々の銅メダルで、少し誇らしい気になった。だから、編集長に祭り上げられたのか・・。下らない邪推はさておき、ということは、次の計算が可能になる。便宜上、これら常連執筆者12名を「クエスト12」とよんでおく。 (1)『QUEST』総原稿数(699)に占めるクエスト12の原稿数(178)の割合 ーーー 178 ÷ 699 × 100 = 25.46% (2)『QUEST』総執筆者数(308)に占めるクエスト12の人数比ーーー 12 ÷ 308 × 100 = 3.896% このように、『QUEST』の全記事の4分の1は、わずか4%の人々によって書かれてきたのである。クエスト12こそ、これまでの『QUEST』の論調を決めてきたといってよい。そして、今後も彼らに定期的に執筆を依頼しなければ、隔月刊でこれだけの雑誌を刊行し続けていくことは不可能であろう。 関連して、クエスト12以外の投稿回数別の人数を次に示すことにする。 投稿回数 該当投稿人数 8回 2人 7回 6人 6回 10人 5回 7人 4回 6人 3回 19人 2回 42人 1回 177人 1回しか投稿していない人が177人もいる。当然、原稿数は177本で、これを総原稿数699で割り算すれば、『QUEST』全記事の25.32%は1回だけの投稿者によって占められている。すなわち、『QUEST』全記事のうちの4分の1はクエスト12によって、もう4分の1は新規投稿者によって執筆されてきたのである。残り半分が、投稿回数2回から8回の中堅投稿者の原稿ということになる。 編集長としては、この新人177人をリピーターにすること、42人もいる2回投稿者をスリーピーター(スリーとリピーターを併せた造語)以上にすることで、クエスト12の負担軽減をはかりたい。 もちろん、新たな執筆者の開拓も続けなければならない。5号ごとに新規執筆者が1号あたり平均何人いたかを算出してみる。 総新規執筆者 1号あたりの新規執筆者数 1〜5号 74人 14.8人 6〜10号 59人 11.8人 11〜15号 46人 9.2人 16〜20号 44人 8.8人 21〜25号 32人 6.4人 26〜30号 31人 6.2人 31〜34号 19人 4.8人 明らかな漸減傾向を示している。創刊から10号までは新規執筆者が多いのは当然としても、31号以降は5人しか新顔がいないのは少し寂しい。とりわけ、最新刊の34号に至っては、新たな執筆者は1名のみである。誌面も不断の新陳代謝をはからなければならない。7人程度の新規執筆者を毎号迎えることはできないか。 80頁に増頁された11号以降の各号の平均原稿本数は22.04本である。クエスト12と連載記事、リピーター以上、新規執筆者がそれぞれ7本ずつを担当するというのが理想の執筆者構成であるように思う。ちなみに、80頁建ての1号につき22名(原則として重複はない)も書いている現状は、健闘していると評してよかろう。これを受け継ぎたい。 とはいえ、毎回7名の新人を発掘するのは至難の業である。今回、全執筆者を調べてみて、私が依頼できそうな人はもう出尽くしていることがわかった。あとは当たって砕けろしかない。編集委員各位にもご協力をお願いしたい。 そこで重要になるのは、特集のテーマ設定である。タイムリーで斬新な特集を組んで、新たな執筆者をリクルートする必要があろう。 これまでの特集を類型化してみた。 憲法 3回 / 教育 3回 / 環境 3回/ 社会主義 3回 / 「12月フォーラムへの招待」 3回 / 医療 2回 / 労働 2回 / ジェンダー 2回 その他の計13号は重ならないように思う。つまり、全34号のうち3分の2ちかくはリカレントな特集で、あとの3分の1は新たなテーマ設定が行われてきたのである。リカレントなテーマは、扉に毎号掲載される「私たちがめざすもの」に対応するテーマである。『QUEST』のいわば「売り」なのだ。私が編集長を務める間も、半分は上記のようなリカレント特集、残り半分は新規テーマの開拓に知恵を絞る、ということになりそうである。 ところで、会員の『QUEST』読了率はどれくらいであろうか。私など恥ずかしくてとても告白できない。読了率を上げるにはどうすればよいか。記事の内容もさることながら、誌面の刷新も考えてよいのではないか。 コストを度外視して勝手なことを言えば、まず表紙には特集を意識した写真なりコラージュなどがほしい。一目で思わず開いてみたいと感じるような。また、中を開くととにかく黒い。最新の34号には糸数慶子さんの写真があるが、もっともっと写真があっていい。 いまやデジカメ時代である。低コストで写真掲載は可能なのではないか。連載記事担当者の顔写真、12月フォーラムや定例研究会、合宿の風景、書評で取り上げた本の書影などがあれば楽しい。新編集長の顔写真も必要かな。さらに、網掛けなどでコントラストにもっと工夫を凝らすこともできよう。 少し大げさなことを言えば、『QUEST』は貴重な文化財である。国立国会図書館に寄贈して永久保存されるべきであろう。私の勤務先の図書館にも入れる手続きにさっそくかかりたい。 加えて、10号にはある「総目次」を40号には復活させたい。 最後に、これは編集長の権限を超えるが、オルタ・フォーラムQのホームページとリンクさせて『QUEST』の存在をもっとアピールしたい。いまそれをみると、2002年5月14日で更新が止まっている。専任の委員を置いて拡充すべきであろう。総会で発言すべきだったが、いまになって気づいた。 以上、ずいぶん大風呂敷を広げてしまった。私が編集長を辞めるとき、これらの「公約」がどれくらい達成されていることか。それを考えると気分が滅入ってくる。やっぱり、はかられたなあ。 |