孤独な育児はごめんだ

   西川伸一  * 『QUEST』第14号(2001年7月)「編集後記」掲載

 ☆今号の特集は少子化社会。4月13日に厚生労働省が発表した保健福祉動向調査によると、35〜44歳の女性が、男女の全世代を通じてもっともストレスを感じているのだそうだ。孤独な育児に疲れた彼女たちのうめきが聞こえてきそうだ。

 ☆ちょうどその年代にあたる私の妻は、いま育児休業中。夕方に帰宅すると、生後7 が月の次女に目をつり上げて離乳食を与えている。相手にされない長女が横で大ぐずり。このような光景が多くの子育て家庭でみられるのだろう。たいてい夫の姿はそこ にはない。長時間労働で深夜帰宅だ。

 ☆私の親の世代では、女性にとって結婚は一つの就職だったという。今では、独身女 性のマンション購入が目立つように、彼女たちは男性に頼らずともたくましく生きている。ひとたび結婚となっても、あるいは子どもが生まれても仕事を続けたいとする 女性が少なくない。

 ☆そこで必要とされるのは社会のバックアップである。小泉首相は国会での所信表明演説(5月7日)において、「仕事と子育ての両立」をはかるため「明確な目標と実現時期を定め、保育所の待機児童ゼロ作戦を推進」すると公約した。

 ☆おおいに結構だが、もちろん問題はこれだけで片づくわけではない。子どもたちは、保育園では決して満たされない、親からの 愛情に飢えているのだ。

 ☆孤独な育児を解消するため、そして、両親そろっての愛情を子どもに注ぐため、夫 たちを会社から家庭に返す政策を望みたい。


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