日本の勲章

7期(2003年3月卒) 太田原 崇宏


 いささか自慢めいた話になって恐縮であるが、昨年並びに一昨年、私の身内に受勲者が人も出た。詳しい等級などに関しては伏せておくが、とりあえず、瑞宝章をもらったとだけ、述べておく。受勲者が立て続けに出たので、親族が集まって祝いの席を設けたのであるが、その席で或る親族が「こうした勲章というものは、天皇の側に国民を結びつける効果がある」と言っていた。この言葉が、私の脳裏に焼きついて離れなかった。そうだ、勲章とは陛下から頂くものなのだ! 国家に対して功績のあった者に、陛下が労いの言葉をおかけになられ、授けられるものなのだ(注)

 内閣府賞勲局のホームページによると、現在の日本の栄典制度は、憲法第条と第14条に則ったものである栄典の授与は、天皇の国事行為であるが、当然それには内閣の助言と承認が必要とされる。したがって、栄典の授与は内閣府がこれをコントロールしている。基本的に、「国家に対し功績のあった者」を「その者の一代に限り」賞賛する制度である。また、その賞賛は名誉的なものにとどまり、「いかなる特権も伴わない」(日本国憲法第14条)。

 日本の栄典には、勲章・褒章・位階のつの区分が存在する。位階とは、「従三位」とか「正一位」のように数字による序列が付されるものである。何の「序列」なのかについては、「国家に功績がある序列」ということとされている。現在、内閣府大臣官房人事課がこれを所管している。因みに、叙勲の所管は内閣府賞勲局が担当している。戦前の栄典制度では、栄典の授与自体が天皇大権のつであったため、位階の序列は「天皇に近い」序列ということとされていた。

 勲章と褒章の区別であるが、勲章は長年にわたる功績に対して与えられるものであるのに対し、褒賞は、例えば災害等の危険な状況における人命救助など、比較的短期間で顕著な功績を挙げた者に対して授与されるのが普通である。

 勲章・褒章には以下のものが存在する。紙幅の関係上、細かい部分は省略する。

 

勲章(英字表記:Order

 大勲位菊花章

 桐花大綬章

 旭日章・瑞宝章

 文化勲章

 宝冠章

 

褒章(英字表記:Medal

 紅綬褒章

 緑綬褒章

 黄綬褒章

 紫綬褒章

 藍綬褒章

 紺綬褒章

 

 褒章には、この他に「杯」「褒状」というものが存在する。これは、褒章叙勲対象者が既に死亡していたり、団体であったりする場合、遺族や団体関係者などに与えられるものである。「杯」「褒状」には天皇家のシンボルマークである菊の御紋が刻まれている。

勲章・褒章は毎年、29日(昭和の日)と11日(文化の日)に受勲者のリストが発表される。毎回、800名に授与され、授与に当たっては、各府省庁等の推薦を受け、閣議でこれを決定する。その上で、陛下に上奏し、裁可となる。

勲章には正式な勲章本体と、略章がある。褒章は英字表記がMedalであるとおり、そのまま衣服につけることが出来る。勲章等を衣服につけることを「佩用(はいよう)」と言う。しかし、それ以上でもそれ以下でもない。それを佩用しているからといって、何か特別な力を授かるわけでもない。あくまで「名誉的」なものなのである。また、佩用については、厳格な決まりがある。「勲章等着用規定」(昭和39年総理府告示第16号、平成15年内閣府告示第11号)という決まりであるが、勲章の等級ごとに、着用すべき衣服の種類が定められている。例えば、勲一等は紋付羽織袴またはモーニング、四等以下は平服、などである。また、勲章等を佩用すべき場合も定められていて、例えば「国・地方公共団体、または公の機関が行う式典に参加する場合」が挙げられる。したがって、佩用する機会は少ない。受勲者から「めったに佩用しない」という声さえも上がるという。

上、現代日本の栄典制度を概観した。読者諸賢が、日本の国家像について考える上でのヒントとなれば幸甚である。

 

 この認識は、エッセイを書いていく過程で改まった。勲章の中でも、旭日大綬章・瑞宝大綬章以上並びに文化勲章は、宮中において首相侍立のもと、陛下から授与される。このことを「親授(しんじゅ)」という。その他の勲章は、宮中で首相から授与されるものと、各省大臣から授与されるものがある。したがって、勲章全てが陛下から親授されるものではないのである。

 

参考文献・資料

 

佐藤正紀『勲章と褒章』時事画報社、2007

総理府賞勲局監修『栄典事務の手引き 第五次改訂版』ぎょうせい、1994

豊沢豊雄『勲章・褒章の貰い方教えます』日本法令、1991

内閣府賞勲局ホームページ URLは省略)

WIKIPEDIA 「栄典」「褒章」URLは省略)


back