イラク戦争とアメリカ人(更新日2003/03/31)

 いよいよというか、とうとう、『アホでマヌケなアメリカ白人』(原題 Stupid White Men)※ はイラクへの攻撃を開始してしまいました。戦争を、前世紀の遺物として、捨て去ることが出来なかった人類のおぞましさ。
   ※マイケル・ムーアという人のこの本(柏書房刊、1600円)、日本で売れているとか?読みましたか?
     実に痛快な本です。因みにこのMichael Moore氏のドキュメンタリー映画"Bowling for Columbine"は
     今年のオスカー賞のドキュメンタリー部門を受賞しました。授賞式での彼の「喜び」の挨拶。
     「私たちは作り話で国民を戦場に送り出してしまった男と一緒に住んでいる。私たちはこの戦争に反対
     する。ブッシュよ、恥を知れ! 恥を知れ、ブッシュ!」(3月24日、Lansing State Journal)。

 以下はミシガン州・ランシングで観察した主観的現地報告です。
 マスコミの世論調査報道によると、ブッシュ政権のイラク攻撃方針にたいして、アメリカ国民の大多数は支持をしているという。ABCテレビは3月24日に世論調査結果を公表し、それによると、戦争開始前よりも「攻撃支持」派が増大し、7割を占めるという。この数字、私のまわりをみるとにわかに信じがたいのですが、息子や友人や恋人を直接に戦場に駆り出されている国民としては複雑でしょう。戦争が長引くに連れて反戦ムードが増えているという報道もあります。
 しかし攻撃開始前の反戦派の動きは活発でした。
 昨年11月、今年に入って1月18日、2月15日と全米の主要都市で大がかりな反戦集会が開催されました。国土の広いアメリカです。大都市に出かけるのも大変です。私が住むミシガン州ランシングでは、都合をつけて前日からバスやトラックでワシントンに向かいます。それとは別に、独自に集まって連帯集会を開催してました。1月18日は、最高気温が零下8度、それこそ厳寒の時期でした。翌日の新聞はその模様を次のように伝えました。
「the frigid temperatureに立ち向かい、参加者の熱い息吹がブッシュ政権に抗議の寒気団を起こした!」
 2月の反戦デーの時は、私はちょうど所用でサンフランシスコにいたのですが、さすが大都市です。20万人が市の中心部を埋め尽くしたということです。しかもかつての反戦歌手ジョーン・バエズも先頭に立っていたとか。

 こうした「派手」な集会とは別に、市井にも反戦ムードは広がっていました。「No! Iraq War」のバッジを付けた人が多くみられますし、近所の住宅地では家の前庭にこれまた「No! Iraq War」のカンバンを掲げ、さらには道行く車の窓にも同じステッカーを貼っている。スーパーでそのバッジを付けた老夫婦がいたので、「その素敵なバッジはどこで手に入れたのか?」と聞くと、「教会だ!」「どこの教会?」「どこでも売ってるよ。でもこれお前にやる」。
 政治団体ではなく、教会がその運動を支えている。確かに、反戦運動がそれなりに広がっていくわけだ。アメリカの特徴の一つではないでしょうか。

 このように、こんなに反対する人が多いのに本当に攻撃するのだろうかと思えるほどでした。
 3月19日、家でブッシュ演説を聞いていましたが、何とも野蛮な内容。「イラクの国民を解放するためにフセインを追放するのだ!」。もともと大量破壊兵器の廃棄が目的だったんじゃないの? いつの間にか「イラク人民解放!」にすりかわってしまっている。これじゃあ、最大先進国の大統領の演説じゃない。部族の酋長だよ、と感じてしまいました。
 その晩、早速、州議会の議事堂前に「War: Nobody Wins. 」のおそろいのプラカードを持って抗議する市民が座り込みを始めた。翌朝、大学の研究室に前で隣の教授に会い、彼、「いよいよ残虐行為の開始だね」というから「アメリカの野蛮行為に失望した。悲しいね!」とやり返したら、彼曰く。「お前の国はどうして賛成なのか? 石油が欲しいからか?」。私は答えに困ってしまい「お前の国はどうして攻撃したのか? 石油が欲しいからか?」とオオウム返しに反論。結局、二人で頭を抱えてしまった。

 さて、戦争開始以降、反戦派と攻撃支持派とがそれぞれ活発に動いています。下の写真は地元紙Lansing State Journal から転載したものです。

   


   

いずれもLansing State Journal 紙のホームページより

 上段は、攻撃開始の翌日3月21日、ミシガン州立大学での抗議集会の様子を伝えたもの。下段は、翌22日に開かれた戦争支持派の集会を撮影したもの。カメラマンの主観がかなり入っていますが、一つの断面であることは確かです。
 抗議集会に参加した学生たち、過剰警備に頭にきてか、パトカーにスプレーで「No War」の落書き。即刻逮捕。この日、14人もの逮捕者が出たらしい。事実、反戦派の中にテロリストがいるかもしれないということで、ものすごい警備。
 対するブッシュ支持派の集会は、ランシング市の中心、州議会の議事堂前で開催された。退役軍人、若いカップル、兵士の親と思える中年の女性たちが目立ったという。掲げるプラカード、「お父さん、頑張って!」、「息子よ!勇敢に戦え」、「兵隊の貴方、大好き! 無事に帰ってきて!」等々。
 自分の息子や恋人、兄弟が派兵されているという事実は重い。単純にブッシュ政策を支持するというのではない。当然といえば当然ですが、複雑です。

「米軍にはお礼を! ブッシュには反対を!」
反戦派が掲げたというこのプラカード、複雑さを伝えるに十分です。

 戦争の見通しはまだ見えない。イラク国民の意志がまったく見えない中、それでも「戦後」の処理をめぐってまた意見対立が表面化してきた。わが日本政府はどうするのだろう。第2次大戦のとき、今のイラクと同じような立場におかれていたわが日本。世界の反戦と平和に向けて今こそ独自の行動をすべきとき。その責任は重い。

 それにしてもこのところのアメリカでの天気予報、アメリカだけでなく、イラクを中心とした中東地区の予報が放映されているのです。何のため? まさか戦術検討のためじゃあるまい。戦地に兵士としている家族に向けたものなのだろうか。


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