テーマ②「「こと」(文字・律令・制度・都市)の研究」

研究分担者

研究者名 所属・職 研究プロジェクトにおける研究課題 当該研究課題の成果が
研究プロジェクトに果たす役割
吉村武彦 明治大学文学部・教授 奈良時代の文字使用と律令法/令集解・墨書土器のデータベース化

サブユニット研究総括/支配・統治と文字の使用
加藤友康 明治大学大学院文学研究科・特任教授 平安時代貴族社会と日記/儀式書史料の文化資源化

平安時代の儀礼・都市
佐々木憲一 明治大学文学部・教授 古墳時代の中央と周縁
日本古代学研究の国際化
都市・国家支配と地方支配
井上和人 明治大学文学部・特任教授 中華帝国周縁国家の古代都城の展開過程―出土建築素材論を視野に入れて― 古代都城と出土資料論
山路直充 市立市川考古博物館 製品への記銘からみた生産と負担/記銘製品としての文字瓦の文化資源化 古代の瓦生産と文字
川尻秋生 早稲田大学文学学術院・教授 平安時代仏教の研究/僧伝史料の文化資源化

文芸資料と平安時代論

テーマ②の研究分野

 
 本研究の第2テーマでは、国家形成に伴って本格化する文字の使用、その象徴である古代の統治法=律令、そして律令法支配にふさわしい都市の誕生と、律令法が実態化する諸制度という「こと」を研究対象とする。古代の文字使用は、統治手段としての律令法に象徴的に現れる。井上光貞の研究は、日本律令学の最高峰の一つであるが、古代学研究所が公開している鷹司本令集解を駆使して律令法制の全貌を研究対象とする。古代の政事は、制度・儀式として習慣化していくが、天下の孤本である儀式書「除秘鈔」の解明・公開は当該研究に限らず、学界に裨益するところがきわめて大きい。文字は、国家機構以外でも、信仰上の意思表示でも使用されるが、古代学研究所が公開している出土文字資料の墨書土器・文字瓦データベースの研究・充実化は、きわめて重要な研究分野である。


テーマ②の研究内容

 第2研究テーマでは、明治大学所蔵日本古代学研究資料群を活用しつつ、新たな世界的研究拠点を展開するプロジェクトの一環として、特に【1】 1次資料である国分寺瓦関係の前場コレクション、院政期の儀式書「除秘鈔」(室町期写本の天下の孤本)、【2】 2次資料の好太王碑初期石灰拓本、井上光貞『令集解』関係資料群、【3】 そして、古代学研究所が公開している鷹司本「令集解」と、さらに充実化する墨書土器データベース・文字瓦データベース等を活用し、古代国家形成に伴う文字使用の実態と、律令法・制度・都城などの歴史的意義を解明する。具体的に述べれば、
   ① 国家的支配の根幹である養老令(大宝令)の諸規定を、明法家の諸説を集大成した『令集解』から解明する。すでに鷹司本を公開し、また東山文庫本の公開を準備中であり、それらを駆使して解明にあたる。その際、井上光貞による研究(未完成)は、『令集解』解読の大きな手立ての一つであり、日本法制史の研究史上でも重要である。
  ② 律令法の解明とともに、文書行政とも深く関わる文字使用の実態として、文字自体の研究に取り組む。また、律令制による統治の実態を明白にするため、全国から出土する墨書土器と文字瓦を集成するデータベースの充実化をはかる。人文分野にとって、テータベースの構築はそれ自体が重要な研究である。日本で唯一のデータベースの充実化を実現することは、日本史学にとって大きな貢献となる。
 ③ 地域における国家的支配の事実を掌握するため、全国に設置された、国分寺瓦を通じて、各地域の偏差を比較研究する。これは、データベースによる地域的偏差の研究と連動して、律令法による政治基調だけではなく、地域支配の様相と地域実態の多様性を解明するうえで貴重な研究となる。
 ④ 律令制支配を貫徹するには、こうした法制を制度化・儀礼化していく必要がある。天下の孤本である「除秘鈔」の釈読文の作成に取り組む。院政期の儀式書の公開は、それ自体として重要である。

テーマ②の年次別計画

○平成26年度
【1】 1次・2次資料群の古代学上の研究史総括と課題の提示
  (1)国分寺瓦関係の前場コレクションのデータベースの歴史的意味
  (2) 「除秘鈔」の釈読と儀式書における歴史的意味 (その1)
  (3)好太王碑初期石灰拓本(剪装本・全紙本)の釈読と、碑文解読上の意味 (その1)
  (4)井上光貞『令集解』関係資料群と職員令研究の文献目録とその構造研究 (その1) 
  (5)墨書土器データベースの充実化・補訂 (関東地域)
  (6)文字瓦データベースの補訂 (東日本)
【2】 総括的研究
  (1)国家形成と文字使用の研究 (その1)
  (2)日本国家の形成と律令・制度・都市研究 (その1)
*研究方法や運営については3テーマ共同で会議体を組織して、毎年3回協議・点検・評価・改善を行う。

○平成27年度
【1】 1次・2次資料群の古代学上の活用 (その1)
  (1)国分寺造営の歴史的意味と下総国の実態調査 (その1)
  (2)「除秘鈔」の釈読と公開、儀式書における歴史的意味 (その2)
  (3)好太王碑初期石灰拓本(剪装本・全紙本)研究と公開、碑文解読上の意味 (その2)  
  (4)井上光貞『令集解』関係資料群と職員令研究の文献目録とその構造研究 (その2)
  (5)墨書土器データベースの充実化・補訂 (東北地域)
  (6)文字瓦データベースの補訂 (西日本)
【2】 総括的研究
   (1)国家形成と文字使用の研究 (その2)
  (2)日本国家の形成と律令・制度・都市研究 (その2)

○平成28年度
【1】 1次・2次資料群の古代学上の活用 (その2)
  (1)国分寺造営の歴史的意味と下総国の実態調査 (その2) 
  (2)好太王碑文の釈読文の公開
  (3)職員令研究の文献目録の公開と、都市構造の研究 (その1)
  (4)墨書土器データベースの充実化・補訂 (中部地域その1)
  (5)文字瓦データベースの補訂 (畿内その1)
【2】 総括的研究
  (1)国家形成と文字使用の研究 (その3)
  (2)日本律令制の研究と中国との比較研究 (その1)

○平成29年度
【1】 1次・2次資料群の古代学上の活用 (その3)
  (1)国分寺造営の歴史的意味と下総国の実態調査 (その3)
  (2)好太王碑文とヤマト王権の研究 (その1)
  (3)職員令研究の文献目録の公開と、都市構造の研究 (その1)
  (4)墨書土器データベースの充実化・補訂 (中部地域その2)
  (5)文字瓦データベースの補訂 (畿内その2)
【2】 総括的研究
  (1)日本列島における文字利用の研究 (その1)
  (2)日本律令制の研究と中国との比較研究 (その2)

○平成30年度
【1】 明治大学所蔵の日本古代学資料群の公開と研究 
  (1)下総国国分寺・国分寺尼寺の研究発表
  (2)好太王碑文とヤマト王権の研究 (その2)
  (3)職員令研究の文献目録の公開と、都市構造の研究 (その2)
  (4)墨書土器データベースの最終的公開
  (5)文字瓦データベースの最終的公開
【2】 総括的研究
  (1)日本列島における文字利用の研究 (その2)
  (2)日本律令制の構造的研究

期待される成果


   本プロジェクトは、2004年の古代学研究所設置以来推進してきた歴史学・文学・考古学・民俗学を横断する複眼的古代学研究に立脚して、新たに3研究テーマで構成される「日本古代学研究の世界的拠点形成」を目的とする。
  本研究テーマでは、日本法制史学の最高峰・井上光貞の軌跡をたどり、日本の歴史学・法制史学の学問形成の再検討を企図している。この研究は、漢字文化圏にとどまらず、世界的な政治社会・国家形成の解明に重要である。墨書土器と文字瓦データベース構築は、日本において当研究所だけの事業であり、学問・学界に裨益すること大である。これらは文化資源化し、HP・研究会・シンポジウムでも公開する。そして、古代学研究所の紀要、図書館・博物館と連携した展示を通じて広く社会に発信する。これまでの古代学研究所を介した研究ネットワークを通じて、日本古代学を研究対象とする世界の研究者を結集し、「日本古代学研究の世界的拠点形成」の実現をはかる。
  なお、学内・学外研究者からなる本プロジェクト評価・検証委員会を組織して、第2・4年度末に外部評価を受ける。


 

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