2-6 古典的道具の使用

明治大学情報コミュニケーション学部教授
メタ超心理学研究室 石川 幹人

 ここでは,心霊研究の時代から使われていた小道具として,「アルファベットボード」と「ダウジング」を取りあげる。昔は,霊魂の仕業でそうした小道具が動くと解釈される向きもあったが,現在では被験者の「非意図的筋肉運動(UMM)」によって動くものと解釈される。そのため,PSI現象であるかどうかは,その小道具に,被験者が通常知り得ない情報が表現されるか否かによって判定される。

<1> アルファベットボード

 アルファべットボードとは,アルファベットの文字が書かれた数十センチ角の盤であり,「ウィジャボード」とも呼ばれる。その上に,コンピュータのマウスのような滑らかに移動するカーソルを置き,被験者は指をそのカーソル上に軽く載せる。カーソルが移動して止まったところの文字をつなぎ合わせて単語や文章にするのだが,古くはそれを霊界からのメッセージであるとした。日本では「こっくりさん」という名前で親しまれ,通常はカーソルに五円玉が使われた。
 アルファべットボードの被験者は,腕の力を抜き,無心の状態でカーソルが自然に動くようにする。複数の被験者がひとつのカーソルに同時に指を載せて行なうのも効果がある。自分の腕が意に反して動き出すと不気味であるが,大勢で行なっていると,他人の動きに追従している気がして,被験者の気分が楽になるのである。被験者が複数であると,PSIの発揮による責任が他人に転嫁できて,PSIが発揮されやすいとも言われる(5-1)。
 アルファべットボードをPSI実験に使うには,たとえば,単語をターゲットにしたテレパシー実験にすればよい。無作為に選ばれた単語を送り手が念じ,被験者はその単語をアルファベットボートが綴り出すように試みる。判定には,いくつかの単語群の中から被験者がターゲットとなった単語を選び出すようにする。この辺の実験手順はガンツフェルト実験(3-2)と同様に行なえる。

アルファベットボードアルファベットボードの実験

<2> ダウジング

 ダウジングとは,古くから「水脈占い」に使われてきた方法であり,ダウジングロッドと呼ばれる棒を使う場合と,振り子(ペンデュラム)を使う場合とがある。ダウジングロッドには,Y字型のものと,L字型の2本組みのものの2種類がある。Y字型のものは,先の開いた両端を両手の平の間に押さえたうえで,棒に軽く指を添える。屋外を歩いて水のある所に来ると,Y字の末端部が地面に垂直な方向に動くと言われる。L字型のものは,両手にそれぞれ1本ずつ,棒の短い部分を軽く握り,その握りこぶしの上で,棒の長い部分が地面と水平になり,かつ2本がお互いに平行になるようにしながら,屋外を歩く。水脈の上に来ると,2本の棒が互いに遠ざかるように開き,水脈の方向に一直線になって止まると言われる。
 ダウジングロッドが屋外でうまく働いても,PSIの証拠にはとてもならない。水のある位置が植物の生え方や水蒸気の量で被験者に分かり,無意識的にダウジングロッドを動かしている可能性が大きいからである。
 PSI実験を行なうには,屋内で振り子を使うのがよい。振り子は,石に十数センチの鎖をつなげたようなものでよく,鎖の末端を指でつまんで,石が宙に浮くようにする。腕の力を抜くと,その石が(自然に?)振れたり回転したりする。振り子がひとりの人間であるかのように「語りかける」気持ちになるとうまくいくと言う。そうは言っても,振り子はPKで動くのではなく,被験者が無意識に動かしているのである。その証拠に,物にぶら下げた振り子を触らずに動かそうと思っても,そうは動くものではない。
 振り子の応用範囲は広い。地図の上で振り子を移動し,回転し出したらそこが何か重要な地点であるという考え方で,資源探査や犯罪捜査などに利用できると言う。身体の絵の上やDNA染色体マップの上で行なえば,病気の診断になるという仮説もある。文字の書いた紙の上に振り子を垂らし,振り子が振動した面方向に書かれた文字をメッセージであると見なすと,上述のアルファベットボードと同様の実験が実施できる。振り子の動きの意味づけは,時計回りはYES,反時計回りはNOなどと,被験者が納得できれば適当に決めてよいようである。人間の持った振り子の運動に遠隔地から影響を与えようとする,DMILS(2-4)の実験も実施されている。

ダウジング振り子によるダウジングの実験

<X> 付記

 本項の内容はSSPにおけるアルファべットボード実験体験と,RRC研究ミーティングにおけるマリー・アンダーソン氏とジム・ウェルズ氏のダウジングについての講演内容をもとにしている。


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