4-2 性格との相関研究

明治大学情報コミュニケーション学部教授
メタ超心理学研究室 石川 幹人

 本項では,直観的,感情的,自発的,外向的といった被験者の性格と,PSIの発揮との関連性を検討する。

<1> PSIの「大きさ」測定

 PSIミッシングが登場したため,PSIの相関研究に工夫が必要となった。ある指標とPSIの大きさとの相関を研究する場合,PSIの大きさをどのように計算するかである。被験者によってヒッティング傾向とミッシング傾向の者がおり,どちらもPSIを発揮しているのだが,単純にスコアの和をとると相殺されてしまう。そこでPSIのスコア平均が偶然平均であっても,被験者のスコア間の分散を計算し,それをPSIの「大きさ」とする考え方が生まれた。「動機づけ」(4-1)の高さは,こうしたPSIの大きさと相関があるとパーマーは主張する。

<2> 自発的想像傾向

 PSIの大きさと相関のある性格指標は何かが,次の興味となる。パーマーは,ホノートンがPRLで行なったガンツフェルト実験のデータベースを,この観点から分析した。そのデータベースには,全参加被験者について,MBTIという性格検査の結果があった。パーマーは,その性格指標のうち,N(直観指向),F(感情指向),P(知覚指向)が参加者相互に相関が高いことを見つけ,それらを合わせたもの(NFP)に注目し,「自発的想像傾向」とみなした。自発的想像傾向は端的に言うと,心の内に自然に現われるイメージを大事にする傾向となろう。
 NFPとPSIの大きさとの相関を取るとやや有意であった。もう少し詳しく述べると,ガンツフェルト実験(3-3)では,ESPで感じ取ったイメージが4つの絵(うちひとつがターゲット)のどれと近いか1位から4位まで順位をつける。ターゲットが1位に割当てられれば大当たりで,4位に割当てられれば大外しである。パーマーは,NFPの高い被験者が1位と4位に割当てがちである(つまりスコアの分散が大きい)ことを指摘したのである。ちなみに,NFPの高い被験者が1位と2位に割当てる(つまりよく当てられる)ことは,偶然期待値にすぎなかった。ただ,ホノートンが,NFPの高い被験者が1位に割当てやすい(つまり大当りする)ことを有意に示している点は,注意を要する。
 次にパーマーは,RRCで行なわれていた同様なガンツフェルト実験のデータベースを分析した。そちらでは,NEO-PIという別の性格検査が被験者に課されていたが,NFPと同様な3つの指標について,類似の結論を見出した。これらより,パーマーは自発的想像傾向がPSIの大きさに相関すると結論づけている。

<3> 外向性傾向

 被験者の外向性傾向が高いほどESPスコアが高いという相関関係が,統計的に強く示されている。1998年ホノートンらが,1945年から1983年までの17人の実験者による60の研究(被験者総勢2963人)についてメタ分析したところ,外向性被験者のESPスコアと内向性被験者のESPスコアの違いは,極めて有意(Z=4.63)であった。また,強制選択実験(Z=2.86)よりも自由応答実験(Z=4.80)のほうが相違が強く現われた。エフェクトサイズも0.06と0.20で,自由応答実験のほうが大きくなった。
 ただ,個々に見ると奇妙な結果も得られている。PRLのガンツフェルト実験では若干の肯定的相関が得られているが,それは主に女性の被験者の寄与であった。一方,RRCのガンツフェルト実験では若干の否定的相関が得られているが,それは主に男性の被験者のよる寄与であった。より古いFRNMのガンツフェルト実験では,特定の実験者による実験だけが肯定的相関であって,他の実験者のものは否定的相関であった。
 パーマーは,外向性傾向とESPスコアの相関関係のゆらぎに注目し,そこに社会性が関係しているのではないかと見ている。つまり,外向性傾向が高いと社会的な協調性が高く,実験環境における社会的役割を積極的に果たす傾向が高いと推測する。女性のほうが社会的関係に敏感であることが,上の肯定的相関をもたらした可能性や,特定の実験者がその人に特有な実験状況を作りだしている可能性があるという。パーマーは,外向性傾向は結局,実験状況において「心理的快適さ」をより積極的に見出せる傾向と考えてよいと主張している。
 一方アイゼンクは,外向性傾向はPSIの発揮に妨げとなるような心の働き(4-3)を抑制するからスコアが高くなると,別の観点からの説を提唱している。

<4> 神経症傾向

 被験者の神経症傾向が低いほどESPスコアが高いという(負の)相関関係も,統計的に示されている。1991年ワットが,被験者の防衛機構検査(DMT)がなされたジョンソンの13の研究についてメタ分析したところ,神経症傾向が低い被験者のESPスコアは,それが高い被験者のESPスコアよりも有意(Z=4.55)にまさっていた。カーペンターは,ジングローンのガンツフェルト実験で,50人の被験者にロールシャッハテストを課したものを分析し,被験者の不安傾向とESPスコアが,やはり負の相関関係にあることを示した。顕在性不安指標(MAS)に関しても,ラオが負の相関関係にあることを示した。だが,他の研究によると,MASの場合は,課題のタイプやターゲットの種類によって相関関係が揺らぐようである。
 パーマーは1977年の研究で,神経症傾向の負の相関関係は,被験者を個別に実験したときのみに現われ,グループ実験では現われないことを指摘していた。彼は,神経症傾向に再び社会性の寄与を見る。神経症傾向の高い被験者は,自分がPSIを発揮するという,これまで経験したことがない状態に不安を抱き,PSIミッシングしやすい。グループ実験では,多くの被験者が同じ状況に置かれるので,不安が小さいと推測できる。パーマーは,神経症傾向は結局,実験状況において「心理的快適さ」を見出しにくい傾向と考えてよいと主張している。また内向性傾向と神経症傾向は相関があるので,両者を合わせて考える必要性も提言している。

<5> 大きさ・方向モデル

 パーマーは,以上の考察から,PSIの「大きさ・方向モデル」を提唱している(図)。このモデルによると,PSIの発揮は,その絶対的「大きさ」を決める要因と,ヒッティングかミッシングかの「方向」を決める要因との2つで特徴づけられる。彼は,前者の代表的要因に「自発的想像傾向」および「動機づけ」を,後者には実験状況の「心理的快適さ」を対応させている。

大きさと方向
(図:PSI発揮の大きさ・方向モデル)

<6> 性格検査の問題

 性格検査の多くは,質問紙などで被験者の考えや気持ちを問うものである。そのため,被験者の意欲や気分の状態によっては,正確な指標が得られない可能性がある。とくに実験後に行なう場合には,実験結果を知って興奮した状態の検査をしてしまうなどの問題が指摘される。性格検査の結果を考察する場合には,検査がどのように行なわれたかに注意する必要がある(6-4)。
 また,性格検査には多くの種類があり,同じような名前がついている指標であっても,性質が異なることもある。性格検査の結果を考察する場合には,その検査の特徴に精通している必要もある。この点は通常の心理学の研究と同じである。

<X> 付記

 本項の内容はSSPにおけるパーマー氏の講演をもとにしている。


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