山本昌弘教育・研究状況

山本昌弘は、現在明治大学商学部の専任教授です。2012年度から明治大学国家試験指導センター経理研究所長を務め、公認会計士の養成及び会計学研究紀要『経理知識』の発行に携わっています。また駿台会計人倶楽部名誉会長として、明治大学の税理士会にも関与させて頂いてます。
 2012年度から2015年度にかけて、明治大学副学長(研究担当)を務め、副学長として研究・知財戦略機構副機構長、明治大学出版会長、国家試験指導センター長等を歴任しました。この間、明士会(明治大学士業会)担当副学長として、士業会との関係を深めることが出来ました。2017年度から2020年度には、商学部商学科長を務めました。2020年度から明治大学評議員、2021年4月から明治大学体育会自転車部長、2023年度4月から商学部教務主任を務めています。

 現在、明治大学商学部において国際会計論、大学院商学研究科博士前期課程において国際会計論特論、同博士後期課程において国際会計論特殊研究を開講し、国際会計について理論的・実証的に教育・研究を行っています。専門職大学院ガバナンス研究科で、International Invetmentを留学生向けに英語で講義したこともあります(現在非開講)。
 自身の研究活動としては、2005年度以降、経済産業省や中小企業総合研究機構でインド・中国・東南アジアへの海外直接投資問題に携ってきました。副学長就任を機に、中小企業庁や中小企業基盤整備機構において中小企業の事業承継やM&Aのガイドライン作りに関わり、現在も中小企業問題に強い学問的関心を持っています。2019年度には、参議院経済産業委員会及び内閣府未来投資会議において専門家として意見を述べました。2021年には、中小企業庁において「中小M&A推進計画」を座長としてとりまとめました。
 また、連載も積極的に行ってきました。2022年度に、「中小の事業承継・事業引継ぎを巡る2つのガイドライン」、2020年度に、「中小M&Aガイドラインの概要について」というテーマで、『銀行法務21』にそれぞれ2回連載。2009年度には、「実証会計学で考える企業価値とダイバーシティ」というテーマで東洋経済新報社のHPに全4回のブログ連載をしました。2008年度には、同社の『東洋経済統計月報』において「財務指標から見た企業評価」というテーマで全3回連載しました(2009年9月に著書として出版)。2004年度には、『経済セミナー』において「会計制度の経済学」というテーマで全12回の連載を行いました(2006年3月に著書として出版)。2003年度には『丸善新刊洋書案内』において「会計学の研究動向と基本文献」というテーマで全6回の連載を担当し、1997年度には「日本企業における経営戦略的投資決定」というテーマで『旬刊経理情報』に全4回の連載を担当しました。
 今後とも、国際会計や中小企業などの問題について、積極的にTV・新聞・雑誌などのメディアで発信していくつもりですので、ご期待下さい(過去のメディアでのコメント等については、山本昌弘出版業績・その他を参照下さい)。


  I. 授業概要

学部
 2020 年度に教科書(『国際会計・財務論』文眞堂)の出版に伴い、完全セメスター制を前提とした講義を実施しています。春学期の講義は国際財務会計論(教科書第T部)、秋学期の講義は国際ファイナンス・国際管理会計論(教科書第U部)です。2002年度にUniversity of Northern Iowa, College of Business AdministrationでVisiting Professorを、University of Iowa, Center for Asian and Pacific StudiesでVisiting Scholarを務めたことで米国会計制度を重点化するなど、自らの経験を踏まえて講義内容を適宜変更しています。
 春学期ではまず、2005年にEU諸国やオーストラリアなどの資本市場で制度化された国際会計基準(IAS)/国際財務報告基準(IFRS)について、1999年以降制度改革が進む日本の企業会計基準と比較しながら講義します(第1章及び第5章)。国際会計基準は、2008年に米国でも解禁されるとともに、日本も2009年度から任意適用し、すでに200社の上場企業が採用しています。さらに、強制適用が引き続き検討されています。そして、国際会計基準との間で概念フレームワークの共通化が進められている米国の財務会計基準(FAS)、及び2003年に大幅改革がなされた米国公認会計士制度について講義します。米国財務会計基準は2002年に日本国内の資本市場で解禁されていますから、これら3者の内容をよく理解することは、日本で会計に携わるにあたっても極めて重要です。その際に、実証会計学(Positive Accounting)として、株主と経営者の契約関係に注目しながら、出来るだけ実証データに裏付けられた理論的な授業を行いたいと考えています。
 秋学期は、日本企業がグローバル化する際に直面する会計・財務上の諸問題を取り上げます。講義の内容は、グローバル化戦略を実現するための海外直接投資や国際的M&Aの意思決定、移転価格税制、過少資本税制、タックス・ヘイブン対策税制、外国税額控除制度などの国際課税制度(BEPS)とそれを踏まえたタックス・プランニング、外貨換算会計と為替リスク管理などで、国際管理会計論ないしは広義の国際ファイナンスというべき分野です。さらに、バランスト・スコアカード(BSC)やEVAなどの世界標準の管理会計技法や企業評価技法も取り上げます。
 なお、講義は、すべてPowerPointを使用するとともに、世界の企業のHPにアップされている財務情報を分析するなど、明治大学リバティー・タワーの最新の情報環境をフルに活用した実践的な授業を行っています。授業のシラバスや講義資料などは、明治大学のインターネット教育・研究コンテンツ・システムであるOh-o! Meiji!にアップし、学生の受講の便宜を図っています。


 商学部のゼミナールでは、3基準の比較を前提にした国際会計理論の研究をテーマに掲げています。国際会計論は海の向こうの遠い話ではなく、日本でも適用される具体的な会計基準です。特に国際会計基準や米国財務会計基準はまず概念フレームワークを構築し、そこから個別の会計基準を設定するという演繹的なアプローチを採っています(2022年度のテキストは、平松一夫『IFRS国際会計基準の基礎』を使用)。その意味で国際会計論こそが、日本の会計における基礎理論を提供してくれるのです。今や国際会計論の知識が日本で直接役に立つ時代なのです。
 2007年度に明治大学経理研究所副所長に就任した頃から、ゼミナールでは公認会計士の養成に力を入れています。現在、多数のゼミ生が公認会計士に現役合格しています(2019年度には、13名合格)。経理研究所の特別会計研究室(駿河台・和泉)に入室し、先輩公認会計士の指導のもと資格取得を目指して下さい。また、日商簿記検定も勧めています。ゼミナール活動はそれほどハードではありませんが、出来る限り理論的・実証的にアプローチすることを原則としています。毎年、2年ゼミにゼミ出身の現役公認会計士を招き、受験勉強の仕方から公認会計士の仕事の中身について、有益な話をしてもらっています。ゼミでは、経理研入室、現役合格、公認会計士資格取得、現役ゼミ生指導という好循環を今後も維持していきたいと考えています。
 現場を知るため、ビール工場や自動車工場、電機工場、製鉄所などの見学を毎年実施してきました。2019年度は春にサントリービール武蔵野工場、秋に明治坂戸工場を見学しました。ゼミではさらに、ICT化が進展する会計業務に対応すべく、会計データベースや電子ジャーナルなどを活用するためのパソコン実習を行っています。ゼミ生の発表もPowerPointで行っています。ゼミは、2・3・4年生ともにグループ学習によるアクティブ・ラーニングが基本となっています。
 さらに山本昌弘が執筆・編集した国際会計論関係の著書(現在14冊あります)や論文(『週刊エコノミスト』『會計』『経済セミナー』『東洋経済統計月報』『CSR企業白書』『銀行法務21』などに130本程執筆しています)、コメントが掲載された新聞記事(日本経済新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、東京新聞など)を講義やゼミナールなどで活用し、つねに日本の財務会計との比較を行いながら、将来役に立つスキルとして国際会計を習得してもらいたいと考えています。現在、駿河台キャンパスの講義は月曜日午後、ゼミナールは木曜日午前午後に開講しています(2年次和泉キャンパスは金曜日午後)。2022年度は2年ゼミでトーマツ監査法人、3年ゼミで新日本監査法人による特別講義を実施しました。


大学院
 大学院商学研究科博士前期課程の講義では、英国のUniversity of ReadingやLondon Business School、さらにはUniversity of Northern Iowaの教壇に立っていたこともあり、ケース・スタディーを活用したビジネス・スクール型の授業を行っています。国際会計基準、国際資本予算、キャッシュ・フロー会計、国際税務などのテーマを取り扱っています。
 博士前期課程及び博士後期課程のゼミナールでは、実証会計学をテーマとして取り組んでいます。まず国際統合が進む会計制度をよく理解した上で、経営者が採る会計行動(財務報告及び管理会計)について国際的財務データベースや各グローバル企業のアニュアル・レポートを活用した実証的かつ分析的な研究を行いたいと考えています。常に3基準の比較を前提に、データベース分析、アンケート調査、事例研究等の実証分析に取り組んでもらっています。統計解析を行った修士論文が増えています。
 商学研究科の授業では、英語による文献読解力が不可欠となっています。ゼミナールは木曜日夜に行い、社会人でも学び易い環境を提供しています。


  II. 研究テーマ

グローバル大企業の会計・財務問題(Accounting and Finance for Multi-national Enterprises)
 学部・大学院で担当する国際会計論については、多国籍に活動する上場大企業の会計・財務問題として実証会計学の観点から、研究に取り組んでいます。そこでは国際会計基準(IFRS)による会計国際統合を大前提に、利益管理を中心とした会計政策について資本市場分析や統計解析を行うとともに、国際比較に応用することを目指しています。また研究のスタートが京都大学大学院経済学研究科における資本予算研究であったことから、管理会計・財務会計・ファイナンスを統合するキャッシュ・フロー情報の有用性(EVA, CFROI)に関心を持っています。
 この研究テーマにおける具体的研究内容としては、国際資本市場における国際会計基準(IAS)と米国財務会計基準(FAS)、我国企業会計基準の有用性に関する比較制度分析(CIA)、海外進出の戦略的投資決定プロセス(戦略的撤退を含む)の事例研究及びアンケート調査(SID)、日米企業財務の比較データベース分析などです。近年では、CSR情報等の非財務情報を用いた統合的な企業価値評価にも取り組んでいます。

中小企業の会計・財務問題(Accounting and Finance for Small and Midium-sized Enterprises)
 東北大学経済学部着任以降、長く中小企業大学校、中小企業基盤整備機構、経済産業省などに関わってきたことから、中小企業の会計・財務問題を実践的に研究してきました。上場大企業は会計基準の国際統合を前提にするものの、300万社を優に超える日本の圧倒的多数の非上場中小企業については、全く異なるアプローチが不可欠であると考えています。非上場企業が対峙すべきなのは、グローバルな資本市場では全くなく、地域の社会や従業員であると考えるからです。会計基準については、「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」さらには税務会計が重要です。また大企業同様、中小企業の国際展開についても、政策的な観点から実態調査を続けてきました。
 近年では、「事業引き継ぎガイドライン」や「事業承継ガイドライン」、「中小M&Aガイドライン」などのガイドライン作りにも座長として関わり、中小企業における親族承継・従業員承継、M&A、さらには事業再生などの実践的問題に取り組んでいます。

 なお、両研究テーマとも、鉄鋼業(撤退と再編)、電機産業(グローバル化と国際会計基準)及び医薬品産業(国際的M&A)を主要対象として実証研究に取り組んでいます。






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