イベントレポ―ト

WORKSHOP「ハイデガーと有限性の問題:存在・言葉・死」を開催

2019年1月14日(月)に、WORKSHOP「ハイデガーと有限性の問題:存在・言葉・死」を、哲学専攻の主催で開催しました(科研費基盤(B)「北欧現象学者との共同研究に基づく人間の傷つきやすさと有限性の現象学的研究」との共催)。30名ほどが参加し、ハイデガーの思想について密度の高い議論が交わされました。

ゲストスピーカーとして、『中動態・地平・竈―ハイデガーの存在の思索をめぐる精神史的現象学』(法政大学出版局、2018年)を昨年出版された小田切健太郎氏をお呼びしました。明治大学からは、ともにハイデガー研究者である、哲学専攻の池田喬と、明治大学国際日本学部客員講師を務めている松本直樹氏が発表を行い、哲学専攻の合田正人が司会を務めました。

小田切氏は中動態の分析を通じて、池田は翻訳行為の分析を通じて、存在と言葉の連関にそれぞれ光を当てました。ことばの形式と存在の現れが分かちがたく結びついていることは、松本氏の「死を語ることばをどのように聞くか」のテーマでもありました。存在~言葉~死という、この企画のサブタイトルの連関が多面的に明らかになり、ディスカッションも盛り上がりましたが、他方で、メインタイトルの「有限性」の概念についてはスピーカーのあいだでも共通理解がみられませんでした。ハイデガーに限らず、哲学の概念としての「有限性」に正面から向き合い、有限性をテーマとした研究集会をあらためて開催しよう、と、今後の展望が開けたところで、終了予定時間となりました。

課題も残りましたが、文学部と国際日本学部をつなぎ、また学外からのゲストも迎えて、明治大学のハイデガー研究の現在を共有し、一般に公開する機会を作れてよかったと思います。哲学専攻ができる直前の2015-2017年度には、明治大学人文科学研究所総合研究「現象学の異郷的展開」というプロジェクトを、現在の哲学専攻のスタッフの一部で行っていました(https://phenomenologies-meiji.com)。授業には専門的で高度すぎる内容かもしれませんが、学会で専門家のあいだだけで議論するときよりは聴衆に開かれた内容で、研究者はこんなことをこういう水準でやっているという姿を、学部生の皆さんを含め、一般の方にも知ってもらえるような企画を時折行っていこうと思います。現象学、ハイデガーを一つの軸として、明治大学の哲学研究を今後も発信していきます。(文責:池田)