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第1回例会 図書館と来た道

2014年6月28日(土)、明治大学駿河台キャンパス・リバティタワーにおいて、「2014年度明治大学図書館情報学研究会第1回例会」を開催しました。今回の例会では、昨年、『現代日本の図書館構想』(共編著.勉誠出版)を上梓された中央大学名誉教授の今まど子先生をお迎えし、「図書館と来た道」をテーマにご講演いただきました。参加者は、本学の司書課程受講生を中心に、現職の図書館員の方などを含む63名(本学学生58名、一般参加5名)に上りました。

冒頭、本研究会会長の阪田蓉子氏よりごあいさつがあり、かつて東京大学の大学院で学んでいた時期に、今先生から直接に分類・目録の授業を受けたこと、司書資格を取得した本学卒業生たちが専門科目と図書館情報学の知識と技能を活かして、図書館 は無論、その他の職場でも活躍しており、将来の道が広いこと、明治大学中央図書館で開催中の企画展示「きりえや偽本大全」(5月13日~6月29日)のご案内などがありました。

その後、今先生のご講演に移りました。今先生はまず、戦時下の日本においてカタカナ語が「敵性語」として禁止された状況をお話しになり、“言葉が消滅させられる”ことの怖さを語られました。その後、昭和20年(1945)8月に、日本はポツダム宣言受諾とともに戦後を迎えましたが、その年の11月には早くも、占領軍(GHQ/SCAP)民間情報教育局(CIE)の管轄下に新宿CIEインフォメーション・センターが設置されました。同センターは民主主義普及の拠点として全国各地に展開されていき、当初の占領予定期間であった1948年までに17館、サンフランシスコ講和条約の発効した占領終結時(1952)までに全国各地に23館が設置されています。今先生は、同センターにおいて図書や雑誌などが一般の人びとに開架で、しかも無料で利用提供された様子を紹介され、そのことが日本人にとって“図書館サービスの精神”を理解する上で重要であったと指摘されました。説明にあたって、当時の貴重な写真なども豊富にご紹介いただきました。

昭和26年(1951)からは、同センターの日本人図書館員を養成することを主眼として、慶應義塾大学にライブラリースクール(LS)が設置されました。今先生はLSの第4期生として学ばれましたが、日本の従来の図書館学教育とLSの教育では大きく異なっていたと指摘されました。たとえば、戦前の日本で書架は大きさごと、受入順の排架が前提とされていたのに対し、LSでは分類順の開架制が教えられていました。また、戦前には和書は書名記入のみ、洋書は著者名記入のみであり、このため「川端康成の著作がこの図書館にどれだけあるか」といった事柄について、利用者は知ることができなかったのに対して、LSでは書名、著者名、主題ごとに目録カードを用意する辞書体目録が中心であり、多様な検索が可能であった点などが指摘されました。当時の開架は「セミ接架」(安全接架)であり、金網越しに利用者が図書の背を押し、押し出された図書を職員が書庫から出納する方式であったというエピソードなども、具体的にご紹介いただきました。

今回のご講演を通じて、戦前から戦後にかけて日本の図書館サービスの実態が大きく変わっていったことが、分かりやすく示されていました。参加者の多くは、今年4月から司書課程の授業を学び始めたばかりの学生たちでしたが、現代の日本の図書館がどのような経緯のもとで発展してきたかを考えていく好機となりました。

最後に、明治大学司書課程・司書教諭課程主任より、今先生への感謝と、次回例会・シンポジウムのご案内があり、閉会となりました。盛会のうちに例会を終えられましたこと、今先生はじめ、関係の皆さまに厚く御礼申し上げます。

第2回例会 ほんの少し未来の図書館とは?

      

2014年12月13日(土)、明治大学駿河台キャンパス・リバティータワーにおいて、「2014年度明治大学図書館情報学研究会第2回例会」を開催しました。今回の例会では、今年1月に『つながる図書館―コミュニティの核をめざす試み』(筑摩書房)を上梓されたハフィントン・ポスト日本版レポーターの猪谷千香氏をお迎えし、「ほんの少し未来の図書館とは?」をテーマにご講演いただきました。参加者は、本学の司書課程受講生を中心に、現職の図書館員の方などを含む69名(本学学生67名、一般参加2名)に上りました。

冒頭、本研究会会長の阪田蓉子氏よりご挨拶があり、本学の卒業生でもある猪谷千香氏について紹介されました。変化のときを迎えている図書館について、図書館員のような図書館世界の人ではなく、ジャーナリストとして多角的な、外の世界からの視点をお持ちの猪谷氏からお話しをうかがうことの重要性について述べられました。

その後、猪谷氏のご講演に移りました。まず、この10年で図書館界に起きた変革と現状について解説していただきました。それを受けて、今どのような図書館が出来ているのか、具体例を挙げつつご紹介いただきました。猪谷氏は、それぞれの図書館に特色や工夫があるものの、共通するのは「外」とつながっていることである、と指摘され、現在求められている図書館とは「コミュニティ」機能を持つ図書館であると述べられました。さらに、組織的な観点から、教育委員会から首長部局への移管、自治体の格差から生まれる「図書館格差」などから、どうやって図書館が生き残っていくかという問題にも言及されました。様々な課題と解決方法について国内外の具体例を挙げながら解説していただき、公立図書館以外にも、広くコミュニティにサービスを提供している各種の民間図書館の出現など、新しい波が起こっていることについても指摘されました。図書館を取り巻く状況は厳しいものである、としながらも、今後ますます重要になると考えられる図書館の役割と、生き残りのための戦略について、ご自身の予想を述べられ、講演は締めくくられました。

第2部では、来年度採用の公立図書館司書職の内定を得た本学学生(2名)が、司書職採用試験に関心のある学生を対象に内定報告を行いました。就職活動の開始から内定までのスケジュール、それぞれの勉強方法、採用試験の併願状況などが具体的に述べられ、司書職を目指す参加者たちにとって大いに参考になりました。詳細は、2015年3月刊行の『明治大学司書課程・司書教諭課程年報』に掲載される予定です。

第1部、第2部ともに、講師と聴衆との間で活発な質疑が交わされ、図書館の現状と今後の課題について再考する、よい機会となりました。講演者の方々をはじめ、参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

シンポジウム 図書館活動をとおした東日本大震災支援活動:現状と今後

2014年11月22日(土)、明治大学駿河台キャンパス・リバティータワーにおいて、「図書館活動をとおした東日本大震災復興支援活動:現状と今後」と題するシンポジウムが開かれました。参加者は、本学の司書課程受講生を中心に、一般の方を含む65名(本学学生61名、一般参加4名)に上りました。

シンポジストには、2013年に開催された国際図書館連盟(IFLA)シンガポール大会でベストポスター賞を受賞された福島県立図書館司書の鈴木史穂氏と、今年、『走れ!移動図書館:本でよりそう復興支援』(筑摩書房)を上梓されたシャンティ国際ボランティア会の鎌倉幸子氏のお二人をお招きしました。阪田蓉子会長による開会あいさつの後、お二人にご講演いただき、また、今夏、福島県新地町にて図書館ボランティア活動を行った本学の学生2名による報告も行われました。

鈴木氏は、講演「福島の図書館と図書館員たち~東日本大震災から今日まで~」と題して、福島県の現状についての紹介から震災当時の状況、そして今後の事についてお話しいただきました。具体的には、鈴木氏自身が震災当時に勤務されていた高校と大学でどのような活動を行っていたか、また福島県の図書館と図書館員の方々がそれぞれどのような読書支援・情報支援活動を行ってきたのかをご紹介いただきました。IFLAで発表された「The Librarians of Fukushima」のポスターについても紹介され、震災から3年が経過した今、100年後の福島のために何ができるのかいうことを考えている、という言葉で講演を締められました。

鎌倉氏は「走れ!移動図書館~本でよりそう復興支援」と題して、ご所属先であるシャンティ国際ボランティア会の海外での活動から、いわてを走る移動図書館プロジェクトの発足、運営、現状についてご紹介いただきました。阪神淡路大震災をきっかけに、国内での緊急支援活動を行うようになったという経緯、東日本大震災の支援活動において4月に聞いた避難所の声やそれを踏まえた支援のありかたについて解説していただきました。『走れ!移動図書館:本でよりそう復興支援』(筑摩書房)の内容に触れ、避難所に置くための本を選書する難しさや図書館支援のタイミングなどについても具体的なお話を伺うことが出来ました。本や移動図書館のもつ「安定性」が非日常のさなかにある被災者の方々にとって非常に大切なものであることを理解することが出来ました。

今夏、福島県新地町で図書館ボランティア活動を行った本学司書課程の学生2名が活動報告を行いました。新地町でどのような活動を行い、また大学の講義で学んだことがどのように生かされたのか、現場で感じたことなどを交えて説明しました。

休憩をはさみ、阪田蓉子会長のコーディネートによる、パネルディスカッションが行われました。はじめに、各シンポジストから、ご講演頂いた内容や実務経験を踏まえて、コメントをいただきました。その後、聴衆から寄せられた質問にシンポジストが回答しました。たとえば、「気仙沼の図書館がいち早く再開を始めたが、後手に回りがちな図書館の復興がどうしてそのように早く進んだのか」といった具体的な質問が寄せられました。

今回のシンポジウムでは、東日本大震災から3年が経った今、被災地における復興活動がどのような局面を迎えているのか、また図書館・読書支援活動にはどのような支援が必要なのか、そのときの心構えや実際の声など、より具体的な話題に触れることのできた貴重な機会となりました。講演者の方々をはじめ、参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

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