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第1回例会 さまざまな専門図書館

2016年7月2日(土)、明治大学和泉キャンパスメディア棟において、「2016年度明治大学図書館情報学研究会第1回例会」が開催されました。今回の例会では、一般社団法人 次世代コンテンツ推進機構代表理事の松下鈞氏をお迎えし、「さまざまな専門図書館」をテーマにご講演いただきました。参加者は、本学の司書課程受講生を中心に84名に上りました。

講演冒頭で松下氏は、絵画やオルゴール等、図書資料以外の素材を写真で提示し、専門図書館の概念と区分について説明されました。その後、本年3月に司書課程用のDVD教材として、松下氏が監修された『さまざまな専門図書館』をもとに、6つの専門図書館について詳しくご紹介いただきました。たとえば,国立西洋美術館の研究資料センターでは、図書館員は作品研究・作家研究に必要な資料情報や、展覧会図録等の研究成果を収集・保存・提供しており、そうした資料の中には、エフェメラル資料と呼ばれる展覧会のチラシや案内状など、そのままにしておくと散逸してしまう資料も含まれると説明されました。 

また、日本近代文学館では、直筆作品だけでなく、メモや手紙、さらに、肉声による「声のライブラリー」として音声を収集している点を紹介いただきました。このように、専門図書館は、図書・雑誌といった印刷媒体だけでなく、美術品や映像、テキスタイルなど主題領域特有の情報資源も扱うため、図書館でありながら博物館的な機能をもつ点に特徴があることがわかりました。

最後に、松下氏は、現在、幅広い分野で情報専門職が求められているため、基本的な図書館情報学に加え、主題知識が必要になると指摘されました。そうした知識を兼ね備えた図書館員になるには、何をどう学ぶべきか、大学生活の中で考えてみて欲しい、と学生たちに呼び掛けました。

質疑応答では、「専門図書館の司書は、学芸員と同じような役割を担うのか」「専門図書館で働きたいと考えているが、公募は出ているのか」といった具体的な質問が学生から寄せられ、図書館員として実際に働くことへの興味関心の強さが感じられました。今回の講演を通して、学生たちは、幅広い機能を持つ多面的な専門図書館について学び、そこでの図書館員の役割について深く考える機会となったのではないでしょうか。松下氏をはじめ、参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

文責:松野 南紗恵 (明治大学大学院)

第2回例会 これからの図書館

2016年11月7日(月)、明治大学駿河台キャンパス・グローバルフロント1階ホールにおいて、「明治大学図書館情報学研究会第2回例会」が開催されました。今回の例会では、アメリカ図書館協会(ALA)前会長のサリー・フェルドマン氏をお迎えし、「これからの図書館」をテーマにご講演いただきました。参加者は本学の司書課程受講生を中心に、現職の図書館員の方などを含む122名(学生94名、一般28名)にのぼりました。

講演冒頭、フェルドマン氏は図書館の役割を問いかけ、デジタル環境が発展する中、図書館に求められていることは、利用者自身が自分のニーズを意識できるようになる前から、利用者のニーズを予測し対応することである、と指摘されました。携帯電話やスマートフォン等のコンテンツやコミュニケーションツールを、24時間人々がポケットに持ち歩いている中で、図書館は成長を遂げていかなければならず、今後の鍵となるサービスとしてテクノロジーへのアクセス、コンテンツの作成、そしてデジタルリテラシーについて紹介されました。

続いてフェルドマン氏は、実際にアメリカの公共図書館が持つ、デジタル録音スタジオやメーカースペースという制作室の例を挙げ、図書館が創作のための機会を生み出している、と説明されました。パソコンの操作について利用者に教えたり、テクノロジーに関する行事やクラスを人々に提供することで、図書館がテクノロジーにアクセスする場としてだけでなく、人々の生活の質を向上させること全般に資する場にもなると述べられました。また図書館は、家庭や職場とは別に人々が訪れる「第三の場所」でもあり、アメリカの図書館の多くは、通信教育や在宅勤務、インターネットを使ったビジネスのためのテクノロジーを、無料の高速無線Wi-Fiによって提供している、と説明されました。フェルドマン氏が館長を務めるカヤホガ・カウンティ図書館で、伝統的な図書館のサービスを求めている利用者も多くあり、フェイスブック上でのディスカッションや読書会についても紹介されました。

さらに、地域住民のための集会エリアとして提供される図書館のオープンスペース等についても説明され、地域社会での繋がりを持ち続け、クリエイティブコモンズの中心地となることが、図書館の重要な役割であると述べられました。そのために図書館員は、学習意欲と好奇心を持ち続け、図書館が人々のために機会を生み出し、地域社会を前進させるということを、強調していくべきだと指摘されました。最後にフェルドマン氏は、未来の図書館は人中心の存在でなければならず、図書館は何を所有しているかよりも、人々のために何ができるかということが重要である、という言葉で講演を締められました。

講演後の質疑応答では、図書館における予算の問題や、図書館員の研修制度、そして潜在的利用者への取組み等の質問が多く寄せられ、アメリカでの実践例を踏まえ、日本での図書館の在り方についても深く考える良い機会となりました。盛会のうちに例会を終えられましたこと、フェルドマン氏はじめ、関係の皆さまに厚く御礼申し上げます。

文責:松野 南紗恵 (明治大学大学院)

シンポジウム 図書館を利用者に届ける

2016年10月15日(土)、明治大学和泉キャンパスメディア棟において、「図書館を利用者に届ける」と題するシンポジウムを開催いたしました。参加者は本学の司書課程受講生を中心に70名にのぼりました。

シンポジストには、大阪府立中央図書館の日置将之氏、日本点字図書館の田中徹二氏、そして、東邦大学医学メディアセンターの押田いく子氏をお招きいたしました。本研究会会長の阪田蓉子氏の開会挨拶ののち、御三方にご講演いただきました。

日置氏は、「矯正施設における読書と図書館サービス」と題し、まず矯正施設の種類や施設内での読書環境について、少年院や少年鑑別所での例を挙げながら説明されました。施設内では「読書」を活用した活動として、読書会や読書感想文発表会等が行われ、それらの読書活動を支援する図書館の取組みについて実際の例を挙げつつ、矯正施設と図書館との連携について解説されました。最後に日置氏は、矯正施設の読書環境を整えることで、少年の立ち直りを支援すること、成人の矯正と社会復帰を促すことに繋がるとし、矯正施設をアウトリーチサービスの対象として図書館は認識しなければならない、と指摘されました。

続いて田中氏は、「視覚障害者等への図書提供」と題して、日本における点字図書館創立の歴史とともに、現在の電子図書館の取組みについて説明されました。1940年に点字図書700冊で発足した日本盲人図書館(現在の日本点字図書館)は、全国への点字本の貸出を現在も続けており、その数は1日あたり2tトラック1台分にものぼると紹介されました。また、点字図書や録音資料を集めた「サピエ・ライブラリー」についても詳しく解説され、視覚障害者が公共図書館に利用者として訪れた場合の合理的配慮に関しても、公共図書館が今後取組むべき課題である、と指摘されました。

押田氏は、「患者図書室における図書館サービス」と題し、患者図書室について東邦大学医療センター大森病院「からだのとしょしつ」での実例を挙げながら、その現状と取組みについて説明されました。患者図書室は、患者の知る権利を保障し、患者の自己決定を情報面でサポートする役割を担うとし、からだのとしょしつにおけるレファレンス事例や蔵書構築の方針について詳しく紹介されました。また、公共図書館に「からだのとしょしつ」の利用案内を設置し、相互にその利用内容を紹介しあうことで協力しており、今後は医学図書館等が開催している研修会を中心にその連携を広げていきたいと述べられました。

御三方のご講演に続き、本学文学部の青柳英治先生のコーディネートによるパネルディスカッションが行われました。「図書館を利用者に届ける、アウトリーチサービスにおいて、今後どのような点が重要になるのか」ということに関し、図書館司書による働きかけや、障害者への情報リテラシー教育、そして公共図書館との連携等がシンポジストから挙げられました。また、質疑応答では、「入院患者へ一般書を届けるサービスは行われているか」「矯正施設へのサービスの認識の浅さの原因はどこにあるのか」といった講演内容をより深化させた質問が寄せられました。

今回のシンポジウムを通して、図書館からさまざまな施設や専門図書館に働きかけ、その先で待つ利用者へサービスを届ける重要性について伺うことができ、図書館のアウトリーチサービスについて考える良い機会となりました。講演者の方々をはじめ、参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

文責:松野 南紗恵 (明治大学大学院)

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