航空の二〇世紀 -航空熱・世界大戦・冷戦-
(高田 馨里編、日本経済評論社、2020年)

  • 概 要
     人類の空飛ぶ夢は20世紀の「航空熱」を引き起こし、やがて航空技術、航路、大衆ともに戦争へと駆り立てられることになる。航空黎明期から冷戦期までの軍民航空の世界史。

     本書では、次の三つの課題を設定した。第一課題は、「航空熱」の広がりに着目し、航空の社会的・文化的側面を重視することである。そこで第Ⅰ部「『航空熱』の時代」では、「航空熱」を生み出す基盤となった技術的進歩とそれに対する、個人・社会・国家の反応を考察した。第二課題は、戦間期後半以降の航空の軍事動員過程を明らかにすることである。この課題を扱う第Ⅱ部「世界大戦の時代」では、戦間期から第二次世界大戦期における日本の航空分野の軍事動員過程を、当時の国際関係や航空技術を踏まえながら、航空路開拓、研究機関、航空人材、航空機産業の動員に焦点を当てて検証する。そして第三課題は、対象地域を南アジアに広げ、冷戦期の軍民航空の世界的転回を考察することである。特に第Ⅲ部「冷戦の時代」では、第二次世界大戦後の航空秩序の形成過程における占領下日本の民間航空復活までの経緯、米ソ冷戦下での印パ両国の航空産業の誕生、さらにはジェット時代を迎えたアメリカのブラニフ航空のマーケティングを中心に現代に連なる民間航空文化の形成過程を明らかにする。

    目 次
    序章
    第Ⅰ部 「航空熱」の時代

    第1章  航空熱と世界記録更新 -技術革新の時期・主体・方向性-(小野塚 知二)

    第2章  大正期の飛行熱 (鈴木淳)

    第3章  海軍航空機生産構想と実現の方法
          -航空機廠構想から呉海軍工廠 広支廠航空機部の設立まで-(千田 武志)

    第4章  航空機開発と大西洋横断飛行
          -ユンカースの挑戦と航空熱-(永岑 三千輝)

    第Ⅱ部 世界大戦の時代

    第5章  日独航空連絡の展開 1919〜1945
          -民間の航空熱から軍事航空へ-(田嶋 信雄)

    第6章  戦前戦中期における軍と大学
          -東京帝国大学航空研究所と航空学科の事例-(水沢 光)

    第7章  太平洋戦争における日本航空戦力の配備・補給(西尾 隆志)

    第8章  ライセンス生産の失敗
          -三式戦闘機「飛燕」のエンジン・トラブルをめぐって-(西牟田 祐二)

    第Ⅲ部 冷戦の時代

    第9章  日本の翼の消滅から復活へ
          -米ソ冷戦とアメリカの対日民間航空政策の再検討-(高田 馨里)

    第10章 冷戦期インドにおけるナショナル・エアパワーの形成(横井 勝彦)

    第11章 パキスタン民間航空とアメリカの対パキスタン援助1950〜1961
          (S・ワカー・H・ザイディ)

    第12章 ジェット時代のフェミニズム -エミリオ・プッチ、メアリー・ウェルズと
          1960年代のブラニフ航空のスチュワーデス-(フィル・ティーマイヤー)

    あとがき