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戦間期の軍縮における科学技術の概念化―航空の技術転用と軍事的乱用、1919~1945年

概要

このたび、Waqar H. Zaidi氏をお呼びしてワークショップを開催する運びとなりました。

S. Waqar H. Zaidi 氏は、2008年にロンドン大学インペリアル・カレッジの科学・技術・医学史センターのデヴィッド・エジャートン教授の指導の下で博士号を取得し、現在はパキスタンのラホール経営大学(Lahore University of Management Science: LUMS)で教鞭をとっておられます。氏は、科学技術が国際関係のディスコースにおいてどのように概念化されてきたのかという、極めて重要な問題を調査研究しておられます。今回は、第一次世界大戦後から第二次世界大戦終結までの時期にイギリスにおいて航空問題が軍縮議論においてどのように概念化されてきたのかに焦点を当てて、お話ししていただきます。

日時

2017年3月27日(月)15:00時開始

場所

明治大学アカデミーコモン9階309C教室

101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1

司会

竹内真人(日本大学商学部、言語は基本的に英語)

テーマ

「戦間期の軍縮における科学技術の概念化―航空の技術転用と軍事的乱用、1919-1945年」(’Conceptualising Science and Technology in Interwar Disarmament: Convertibility and Militarism Perversion of Aviation, 1919-1945’)

戦間期イギリスにおける軍縮議論

1920年代後半以降の急進的な航空軍縮提案は、航空技術の特質と潜在性についての長期的な想定に基づくものでした。これらの提案の中心にあったものは、航空は、科学の応用に沿って発展するものであり、本質的には民間の技術であるという想定でした。つまり、航空技術は民間人が発明したものであり、本質的には国際化されるべきものであり、また民間の商業利用によって発展していくものであるという想定です。
しかしながら、民間航空はまた、しばしば科学がそうであるように、容易に軍事転用が可能なものとして捉えられてきました。当時の多くの人々は、民間航空機は軍用機と同類であり、それゆえ戦争が勃発した場合には、容易に爆撃機に転用されると考えていました。他の人々は、民間航空の国家的なインフラは、より広範に軍事利用されえると議論しました。民間航空から軍事航空への転用は容易であるという考えは、1930年代のリベラル国際主義者の中心的な前提となっており、航空技術と国際関係に関する彼らのビジョンにとっても根本的な前提となっていきました。
この考えは、「軍事的乱用(militaristic perversion)」という力強い議論を、結果として軍国主義と政府の政策に対する批判を発展的に促すことになったのです。すなわち、軍は、民間の科学と技術を、その軍事的目的のために乱用しているという主張がなされました。技術の軍民転換と「軍事的乱用」という議論は、幅広い軍縮の議論において用いられ、たとえば、民間航空の国際管理という急進的な提案を導くことになりました。技術の軍民転換と互換性は、国際連盟による一連の軍縮議論や1932年から1933年に開催されたジュネーヴ軍縮会議で幅広く取り上げられることになったのです。

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