●漠然とした章立てを考える

 テーマが固まりつつあるあいだに、卒業論文の漠然とした章立てを考えてみ
 ます。と書くと、あるいは、「卒論の章立てって、調査と分析が終わった後に決
 めるものなんじゃないのか」と驚く、あるいは訝しむかもしれません。

 しかし、漠然とした章立ての構想が頭になければ、調査するといっても、何の
 見当もなく思い付いたままに、計画性もなく調査してしまうことになります。自分
 の論文が、全体で何章構成で、各章にどんなことをだいたい配するのかという
 ことに少しだけでも考えを及ぼしていくと、調査計画も、より具体性と計画性を
 持つことになります。

 まず、卒業論文の章立ての形式的な基本を確認しておきましょう。

 章立てて最も大きな単位は、「」で、以下「」「」「」というようになりま
 す。すなわち、例えば、「第2部―第3章―第1節―第3項」のような階層にな
 るわけです。ただし、このうち、「部」は、数十枚単位の論文ではまず使われま
 せん。博士の学位論文のような大部のものに限られるようです。

 次に、これを組み合わせて、例えば、
   序 章  研究の目的と方法
       第1節 目的
       第2節 方法
       第3節 先行・関連研究
       第4節 資料
   第1章 〜の分析
       第1節 〜について
       第2節 〜について
       第n節 本章のまとめ
   第2章 〜の分析
   終 章
       第1節 結論
       第2節 残された課題

 のように組み上げます。このうち、序章と終章は、ほぼ決まったようなものです。
 序章では、まず何が問題なのかを述べます、そして、自分の研究が何を目的と
 したものなのかを位置付けます。次に、自分が問題とすることを解決するために
 自分が選んだ方法はどういうものかを説明します。そして、これまで、どのような
 研究があったのかをまとめます。

 まえの、論文の読み方で、論文を書く立場で読んでみるといいというようなこと
 を述べましたが、短い論文でも必ず、目的と方法、先行する研究については言
 及があるはずです。また、特別な資料を使う場合には、それについて、その選
 定基準などについて述べる節があったほうがいいでしょう。

 終章も、ほぼ決まったものです。第1節で全体の結論を総括的に述べ、第2節
 では、何をやりのこしてしまったかを反省しつつ、今後の課題を述べていきます。
 こんなことをやりたかったのにできなかった、こんなことをやってみたら面白か
 った(面白いはずだ)というようなことを述べるわけです。

 さて、そこで、残ったものが、第1章、第2章… です。上の組み上げ図にあるよ
 うに、各章で「〜の分析」を展開しなくてはなりません。しかし、要するに、「第1
 章では〜の分析をして、第2章では〜の分析をすることにしようか」というような
 ことをとりあえず漠然と考えてみればいいのです。

 例えば、「さようなら」という挨拶はいつからあるのだろう、時代劇では「さらば」
 と言っているから、別れの挨拶は時代とともに変わっているのではないか、な
 どと考えてみると、それでは、第1章では奈良時代の別れの挨拶、第2章では
 平安時代の別れの挨拶、第3章では鎌倉時代の別れの挨拶、第4章では室町
 時代の別れの挨拶、といくかー、などと思ってみます。しかし、そこで愕然とする
 のは、これでは終わらない^^;; 江戸・明治・大正と書いていくだけで、あっと驚
 きの7章立てになります。1章20枚としても、210枚ですぞ。

 これではかないません。うん、それなら、鎌倉時代までで止めておこう、という
 のも賢い選択でしょう。しかし、まてよ、例えば、『万葉集』に別れの挨拶なん
 て詠み込まれているのかぁ、などと思いはじめると、暗雲がただよいはじめま
 す。そうすると、明治・大正からやってみるか、第1章を明治・大正、第2章を
 江戸時代後期、第3章を江戸時代前期と遡ろうか、などと遡及的な発想が浮ぶ
 かもしれません。

 要するに、具体的な章立てを自分で考えてみる、それと具体的な調査・考察
 計画を組み合わせてみるということです。それによって、自分がどういった計
 画を立てて、どういったスケジュールで動いていかなければならないかが、
 見えてくるはずです。