●文献調査
現代以前の言語を調査する場合には、文献調査は必須のものとなりますが、
現代語の調査でも、文献調査は、ごく普通に用いられます。
「文献」にあたるものは多種多様で、いわゆる文学作品から、日記、証文、文
書、広告、新聞、雑誌にいたるまで、多くの種類があります。文字が書かれて
いる資料は、すべて「文献」と呼んでもいいのかもしれません(その昔、ある国
語学者の演習では、某神社に掛かっている額の裏に書いてあることを調査し
て発表した学生がいたらしい。これも文献なのでしょう)。
文献調査は、面接調査やアンケートのように、生きている人間そのものを対象
とするものではありませんから、ある文献の文字を記している際の意識を尋ね
たりすることはできません(それができたらどんなにいいかと思うこと、再三再四
です)。ですから、注意深く前後の文脈を読み解いたり、全体の構成を見渡した
りしながら、判断していくことが大切です。
また、文献調査は、アンケートのようにいちどきに大量の資料を得るということ
がなかなか難しかったのですが、一つには索引の発達と、もう一つには電子テ
キストの発達とによって、大量のデータを扱うことが可能になってきています。
文学作品の索引であれば、上代・中古・中世あたりまでは相当索引が出そろっ
ていますし、近世・近代も、不充分とはいえ、かなりの索引があります。どのよ
うな索引があるのか、または、自分が調査しようとしている文献には索引があ
るのかということを調べたいときには、
国語国文学資料索引総覧 (国立国語研究所図書館編、笠間書院、1995)
が役に立ちます(明治大学の図書館にもあります)。
また、電子テキストは、コンピュータ上で、調べたい語句を一瞬のうちに見つけ
出してくれます。特に、青空文庫は、無償でさまざまな電子テキストを提供して
いるサイトで、感謝してもしきれないものがあります。また、どのような電子テキ
ストがあるのかということや、自分が調査したい文献が電子テキストで利用で
きるかといったような情報については、明星大学の柴田雅生氏のサイトが極め
て充実した情報を提供してくれます。
http://www.aozora.gr.jp/ (青空文庫)
http://homepage1.nifty.com/mshibata/etext-i.htm (柴田氏HP)
(↑クリックすると飛びます)
なお、言うまでもないことかもしれませんが、索引や電子テキストというものは、
あくまでも便宜的な手段であって、それによって検索した部分を読み解くのは、
やはり普段から培った読解の力によることを忘れてはなりません。じっくりと腰を
据えて本を読むという経験を豊かにしておく必要があります。