変則的体験

変則的体験 anomalous experience とは、超常的体験、超自然的体験といってもおおよそ同じ意味だが、ようするに普通ではない、不思議な体験というぐらいの消極的に定義されたカテゴリーである。
しかし、精神医学で用いられる解離性体験尺度(DES)との関係をみると、ほとんどの項目がこの尺度の得点と高い連関を示すことがわかる。日本人の若者363名を対象とした予備的な調査の結果を別表にまとめてある。調査対象は15〜24歳の大学生を中心とする若者(平均年齢19.62歳、女性162名、男性231名、サンプリングはランダムではない)で、解離性体験尺度の平均値は女性が13.1、男性が11.6で、女性のほうがやや高いが、この人数では5%水準では有意な差ではない(t=-1.42, p=0.078)。
ここで取り上げたのは29個の変則的体験である。個々の変則的体験の体験率は、一般に女性のほうが高いと思われがちだが、女性のほうが統計的に有意に体験率が高い項目は、金縛り、シンクロニシティ、予感の三個だけである。
表ではそれぞれの変則的体験の体験者と非体験者のそれぞれの解離性体験尺度の平均値が、体験者の平均値の高い順に並べてある。この順に体験率を並べてみると、10%未満の比較的まれな現象が上位を占めていることがわかる。逆に体験率が20%以上の、比較的よく起こる現象は体験者の解離性体験尺度の得点も低い。解離性体験尺度の平均値の差が有意ではなかったのは「エイリアン」との遭遇体験だけだが、これは体験したという率自体が非常に低いので、この調査だけでは明確な結論は得られない。
上位に挙がってきている項目を見ると、「霊的」治癒能力、メタルベンディング(スプーン曲げなど)、「ポルターガイスト」、電気感受性などの、いわゆるPK(Psychokinesis)関連の体験や、内的な光やエネルギーなどの、いわゆるクンダリニー関連体験が多いことがわかる。
いっぽう、正夢、虫の知らせ、シンクロニシティ、臨死体験などの、いわゆるESP(Extra Sensory Perception)が関わっているかもしれない体験は解離性体験尺度では中ぐらいの順位になっている。
最後に、明晰夢、デジャヴ、金縛りなどの、超常的な相互作用をまったく仮定しなくても説明できる現象は、体験率も非常に高く、逆に解離性体験尺度の得点は低い。
(作成:2548/2005-01-18)