研究所紹介

深海堆積物中には膨大な量のメタンガスが氷状の固体物質ガスハイドレートとして広く分布することが知られています。ガスハイドレート研究所は、ガスハイドレートの起源と分布、集積のメカニズムを海洋調査と観測、実試料分析を通じて明らかにすることを目的として明治大学研究知財戦略機構内に設立されました。2012年-2020年には駿河台グローバルフロントを拠点とし日本海の東縁海域において稠密な海洋調査を展開し、2020年からは「ガスハイドレート研究ユニット」として拠点を生田キャンパスに移し、基礎データの取得・分析と解析、研究成果の統合と発信を行なっています。

ガスハイドレート研究所への問い合わせ>> hydrate@meiji.ac.jp

NEWS

  • 科学研究費補助金の取得

    ガスハイドレート研究所(松本)は表層型メタンハイドレートの生成・集積・崩壊を統一的に説明するモデル構築を目指す研究で2020年ー2023年科研費「ガスハイドレートと炭酸塩の地化学特性からガスチムニーの成長と崩壊の解明」を取得しました。

    研究所の移転

    ガスハイドレート研究所は研究拠点を駿河台から生田に移転しました。

    研究所メンバーである戸丸仁(千葉大)は学術振興会の二国間交流事業(ロシアとの共同研究)を取得

    本事業は2018年に始まる日本ーロシア共同調査「日本海北縁タタール海域におけるメタン活動の環境影響」を推し進めるものです。

    メタンプルーム検証

    松本良・青山千春による検証論文「日本海東縁、上越沖のメタンプルームによるメタン運搬量見積もりの検証」が地学雑誌129巻1号に掲載されました。日本海の表層型メタンハイドレートが賦存するガスチムニー構造の海底面には、メタンバブル群からなるガス上昇流(メタンプルーム)が見られることがある。日本海ハイドレート学術調査チームは調査の初期段階からこの現象に注目し、無人探査機ROVによる観測・捕集実験と計量魚群探知機による観測を行い、1つのメタンプルームによるメタン運搬量は、年間96,360~166,440モルであるとの見積もりを得た(青山千春・松本良(2009) 計量魚群探知機によるメタンプルームの観測とメタン運搬量の見積もり. 地学雑誌118巻, 156-174)。年間モル数までは検証作業によっても間違いはないことが確かめられたが、年間モル数をメタンの重さ(質量)に換算する際の計算ミスにより、1つのプルームの年間運搬量としてメタン2000トン〜4000トンという誤った数字を示した。正しくは年間運搬量1.6~2.6トンと1000分の1以下である。投稿論文では旧データの検証とは別に、メタンバブルを直接捕集する方法により、メタンプルームの源となる海底メタンシープ(湧出)の湧出量見積もりを行なったが、得られた湧出量は年間1〜9トン程度であった。

    研究所メンバーであるGlen Snyder博士による研究論文「Evidence in the Japan Sea of microdolomite mineralization within gas hydrate microbiomes」が、Nature Scientific Reports に掲載されました。本論文は広く地球科学界に大きなインパクトを与え、発行後1週間で2000件もの引用が記録されています 

    メタンと水から成る氷のような固体物質 ガスハイドレート(あるいはメタンハイドレートとも言う)は地球環境変動やエネルギー資源に関わり、わたしたち人類の未来に密接に関与する。一方、生命の起源、初期生命の解明は地球科学、生命科学における第1級に重要な課題である。微生物活動は高温の温泉水、氷河、深海堆積物など様々な場所で見つかっているが、ガスハイドレート結晶中に高塩分微小空間が存在し、その中で微生物が代謝を繰り返していたとは誰も予想もしていなかって。私たちは新潟県沖、上越堆積盆で、長い連続的なガスハイドレートのコアを採取・分解し、分解後に残ったハイドレート融解水中に、幸運にも、中心部分に暗黒有機物質と生命活動の痕跡を包含する微小なマイクロドロマイトが残されているのを発見した。その後の分析と研究により、ハイドレートの微小空隙中では微生物がオイルのような複雑な有機物質を代謝し、その活動の副産物として微小のマイクロドロマイトが形成され続けたことが明らかになった。生命活動の記録媒体であるハイドレート中のドロマイト結晶は、地球上の他の場所や他の惑星でも見つかる可能性がある。私たちは生命の起源と進化を研究する新たな手段を手にした。
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