サブユニット①「列島文化の中心と周縁」

研究分担者

研究者名 所属・職 研究プロジェクトにおける研究課題 当該研究課題の成果が
研究プロジェクトに果たす役割
石川 日出志 明治大学文学部・教授 日本列島初期農耕社会の地域的差異 サブユニット研究総括。分節的社会構造の解明
佐々木 憲一
明治大学文学部・教授 古墳からみた中央・周縁 古代における社会組織の解明
高瀬 克範 北海道大学・准教授 農具および植物遺体からみた古代農耕 古代における穀物利用の解明
永藤 靖 前 明治大学文学部・教授 琉球史における祭祀と伝承 非文字資料・文字史料からみた琉球の宗教と社会
居駒 永幸 明治大学経営学部・教授 万葉集と南西諸島の伝承 文学にみる周縁社会

サブユニット①の研究分野

 
 本研究は日本列島における文明化のプロセスを「日本古代学」として再構成するプログラムの第1サブユニットで、 古代における中心と周縁の関係性を研究する。本格的な農耕導入と国家形成を基軸とする文明化をささえた物資の生産・流通とその仕組みの制御、あるいは資源 利用の内容とその背景にあった思想・信仰を、考古資料のみならず歌謡・伝承にも基づいて追究する。また、国家や権力の枠組みに規制されない地域・時期の資 源利用や物資生産も、地域史のみならず国家自体の存続にとってきわめて重要な役割を果たしていたことが明らかになっている。文明化の裏返しとして生じた 「周縁と中心」との対立構造の成立プロセスや、「周縁」の果たした歴史的役割を掘り下げ、古代学において日本列島東部や南西諸島が占める位置を明確に位置づける。


サブユニット①の研究内容

 文明化過程における「列島文化の中心と周縁」というテーマに実証的に迫るため、弥生~古墳時代を対象とする研究課題として以下の研究課題を実施する。
 ① 生存財(日常什器・利器など)の生産と流通体制の解明
 ② 威信財(青銅器・鉄器・玉類など)の生産と流通体制の解明
 ③ 石器使用・植物関連資料からみた東北・北海道における穀物利用・皮革生産技術の解明
 ④ 墓制からみた近畿・西日本と東・東北日本との社会構造・政治的諸関係の差異
 ⑤ 古代国家と北方周縁域のあいだにおける物資の動きとその機構
 ⑥ 歌謡・文献史料からみた資源利用の実態解明
 ⑦ 琉球における国家形成期に始まる思想・信仰・伝承の探求
の計7つの課題を設定する。
  この時期、農耕技術や青銅器・鉄器・玉類の資源・製品は、文明化社会から周縁の非農耕世界へと広範に流通する。一方、北方世界の皮革生産は、文献史料から沿海州や朝鮮半島との交流資源なることが知られ、考古学的にその年代はさらに遡上するとみられる。こうした様々な資源をめぐる中心と周縁の相互関与の内実を解明する。依存する資源が異なれば経済組織も異なり、それは社会組織・政治組織の差異にも反映するであろう。その具体像を埋葬法や埋葬儀礼などから考古学的に再構築する。その思想的背景に迫るため、国家形成にまつわる琉球のマツリ・信仰・伝承のアナロジーを導入したい。

サブユニット①の年次別計画

○平成21年度
土器の生産と流通体制の解明(その1)
石器使用痕分析,レプリカ・セム法,青森県江豚沢遺跡の発掘調査による東北地方・
 北海道の穀物利用の解明(その1)
東日本・東北日本の古墳出現以前墓制の分析による社会組織解明へのアプローチ(その1)
琉球における伝承と祭祀の調査研究

○平成22年度
土器の生産と流通体制の解明(その2)  
石器使用痕分析,レプリカ・セム法,青森県江豚沢遺跡の発掘調査による東北地方・
  北海道の穀物利用の解明(その2)
東日本・東北日本の古墳出現以前墓制の分析による社会組織解明へのアプローチ(その2)
古墳文化の中央と周縁の共通性・差異を把握するための東国古墳調査
  (茨城県桃山古墳)(その1)
奄美大島における伝承と祭祀の調査研究

○平成23年度
青銅器,鉄器の生産と流通体制の解明(その1)
石器使用痕分析による東北地方・北海道の皮革生産技術・体制の解明(その1)
古墳文化の中央と周縁の共通性・差異を把握するための東国古墳調査
  (茨城県桃山古墳)(その2)
琉球・奄美大島における信仰と祭祀の研究

○平成24年度
青銅器,鉄器の生産と流通体制の解明(その2)
石器使用痕分析による東北地方・北海道の皮革生産技術・体制の解明(その2)
古墳文化の中央と周縁の共通性・差異を把握するための大和近郊古墳調査
  (京都府寺戸大塚古墳)(その1)
南西諸島における思想・信仰・伝承の研究(その1)

○平成25年度
玉類など装飾品の生産と流通体制の解明
古墳文化の中央と周縁の共通性・差異を把握するための大和近郊古墳調査
  (京都府寺戸大塚古墳)(その2)
南西諸島における思想・信仰・伝承の研究(その2)

期待される成果


  東アジア各地で穀物・金属器・威信財などがはたした物資の生産・流通とそれをとりまく背景を、歌謡・伝承の考察を組み込んで立体的に復元する試みはこれまでにない斬新な視点である。その成果は、物語文芸を主たる研究対象とする第3サブユニットの成果と統合化がはかりやすい。さらに、中心において物資の供給を安定化させるための仕組みやそれを制御するための権力・国家機構を媒介として、支配と文字利用を主として取り扱う第1サブユニットとの整合性を検討することが可能となる特長をもつ。同じ資源でも地域・時期によって全く異なる社会的位置づけが与えられていた点、その生産・流通の体制は社会組織や原材料の入手形態だけではなく、資源に関わる思想・信仰といった言説的側面が関わる点を明らかにできると期待される。こうした作業は、従来の資源利用論や社会経済史的研究の理解に大きな変更をせまることにつながる。これらの研究成果は学術雑誌への論文投稿はもちろん、シンポジウム、多言語対応のウェブサイトや明治大学博物館と連携した情報発信により研究者集団のみならずひろく社会に還元する。


 

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