研究所の目的

研究対象と分析視角

本研究所の目的は、総合的歴史研究を通じて、軍縮と軍備管理を取り巻く近現代世界の本質的構造を解明することにあります。本研究所では、経済史・国際関係史・帝国史・軍事史などを含めた総合的な視点から、武器移転と軍縮・軍備管理との関係、兵器産業と国家の関係、さらには兵器拡散が国際社会や途上国の開発支援に及ぼす影響などに注目して、近現代世界が内包する本質的な問題の構造を明らかにしていくことを目的としています。

兵器の生産と交易の実態は厚いヴェールに覆われて、現状の解明には大きな困難がともないます。近現代の軍縮・軍備管理の問題はきわめて複雑な様相を呈しており、問題の重大性にもかかわらず、その本質を見定めることは容易でありません。兵器や軍事の問題は闇の中に閉ざされているかのごとくであります。本研究所は、歴史を遡って過去に隠蔽されてきた問題の本質と構造を解明し、その成果を広く世界に発信していくことを目指しております。

分析概念としての「武器移転」

軍縮・軍備管理は冷戦後に限った問題では決してありません。たしかに第二次大戦以降、武器取引は急速に拡大し複雑化してきましたが、武器市場の拡大はすでに第一次大戦以前に始まっていました。その点を明らかにするために、本研究所では武器移転という事象の歴史を多角的な視点から分析していきます。

武器移転(arms transfer)とは、武器の輸出入国(「送り手」と「受け手」)の政府・軍・兵器企業などの戦略や関係を総合的に捉えるための分析概念です。それは、武器取引や武器貿易だけを意味するものではなく、ライセンス供与や技術者の派遣と受入れ、さらには武器の運用・修理・製造能力の国際移転までの広範な内容を含んでおります。

武器移転という概念は、冷戦期を対象とした国際政治学の分野では頻繁に使われてきましたが、本研究所のプロジェクトでは、それを軍縮と軍備管理を取り巻く近現代世界の本質的構造を解明するための分析概念として、歴史研究の分野に適用してきました。

武器移転とは、ライセンス供与や技術者の派遣と受入れ、さらには武器の運用・修理・製造能力の移転までの広範な内容を含み(従って、技術移転も含み)、武器の輸出入国の政府・軍・兵器企業などの戦略や関係を総合的に捉えるための分析概念です。武器移転という概念は、戦後冷戦期を対象とした国際政治学の分野では頻繁に使われてきましたが、それを歴史研究の分野に適用したのは、わが国では本研究プロジェクトが初めてです。

歴史研究と「現代」の政策論議との接合

現代の軍縮・軍備管理問題はきわめて複雑な様相を呈しています。だからこそ歴史を遡ることによって、その本質的構造を浮彫にすることが重要であると考えています。ワシントン軍縮会議、ジュネーブ海軍軍備制限会議、ロンドン海軍軍縮会議、さらにはジュネーブ武器取引規制会議での軍縮論議に、イギリス、アメリカ、ドイツ、日本がどのように参画し、兵器生産国としていかに対応したのか。両大戦間期の軍縮協定と武器輸出管理はなぜ破綻し、再軍備へとシフトしていったのか。本研究所がこうした問題に注目してきたのも、以上のような理由からです。

本研究所では、歴史研究と「現在」の政策課題をめぐる論議を結び付けた研究を重視しています。そうした現代的問題意識に根ざした取り組みを通して、従来の閉ざされた研究組織では達成されなかった研究の学際化・国際化を推進し、世界的研究拠点として軍縮・軍備管理の問題を追究していきます。

研究所の活動

研究所の活動

本研究所は、以下の各種活動を通して、研究成果を内外に発信しております。

  • (1)政治経済学・経済史学会の下に組織された「兵器産業・武器移転史フォーラム」の開催
  • (2)研究所主催の公開シンポジウムの開催(年2回)
  • (3)研究所編の機関誌『国際武器移転史』の刊行(年2回)
  • (4)海外研究者を招聘しての国際セミナー・国際ワークショップの開催
  • (5)研究所研究叢書の出版
  • (6)全学部を対象としたオムニバス形式の講座の実施
  • (7)研究所ホームページ、大学広報誌、プレスリリース等による多角的な広報

以上は、すべてが相互に関連しており、研究所のメンバーの研究成果が(学会報告も含め)多角的に発信できるように構成されています。以上の詳しい開催日程や刊行日などは、すべて研究所のホームページでお知らせ致します。

所長 横井 勝彦