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第1回例会 グローバルな図書館活動

       

2019年6月22日(土)、明治大学駿河台キャンパスリバティタワーにおいて、「2019年度明治大学図書館情報学研究会第1回例会」が日本図書館文化史研究会との共催で開かれました。今回の例会では、「グローバルな図書館運動」をテーマに、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のスティーブン・ウィット氏をお招きして、カーネギー国際平和財団(CEIP)の「国際マインドプログラム」についてご講演いただきました。参加者は本学の司書課程受講生を中心に69名(学生51名、一般18名)にのぼりました。

ウィット氏は「国際心を創り出す;本と対話、文化交流を通じて平和とグローバル社会を推進する(1912-1954)」と題し、カーネギー国際平和財団と図書館の間で、国際主義に重点を置いた国際心を形成し、世界中の世論を変える目的で始まったプロジェクトのうち、特に本講演では、図書館コレクションとしての「国際心コーナー」に焦点を当ててお話されました。その後、平和のために公共図書館を利用する動きが図書館専門職や平和活動団体の間で広まりを見せたことや、米国国内での具体的な活動について、写真とともに紹介されました。また、カーネギー国際平和財団の職員と世界中の司書との文通についても触れ、米国内だけでなくアジアやアフリカ大陸、欧州での国際心の発展について説明されました。

講演後半では、日本における国際心について、「国際心」という表現が1916年に雑誌『開拓者』で登場したことや、一橋大学図書館の「国際心コーナー」で展開された資料の内容、当時の図書館司書とカーネギー国際平和財団とのやり取りなどを紹介されました。最後にウィット氏は、国際心を巡る政治的な論争や、第二次世界大戦、冷戦といった社会背景にも触れ、グローバル化が進む20世紀初頭における図書館と専門職の役割と、ご自身の研究における今後の展望について述べられました。

講演後の質疑応答では、「講演内で紹介のあった一橋大学図書館の国際心コーナーでは、米国に関する資料が多かったようだが、この結果をどう捉えればよいか」、「当時の背景と現代では似ている部分も多く感じられるが、国際心に関する取組を現代に置き換えるとしたらどうなるか」といった、講演内容をより深化させた質問が寄せられました。今回の講演を通して、国際化や多様化が進む現代において、今後、図書館はどのような役割を果たしていくことができるのか考えるよい機会となりました。講演者・参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

文責:松野 南紗恵(明治大学大学院)

第2回例会 メイカースペースと図書館サービス                 

       

2019年11月30日(土)、明治大学駿河台キャンパスリバティタワーにおいて、「明治大学図書館情報学研究会第2回例会」が開催されました。今回の例会では、ヘスレホルム公共図書館館長のアネッテ・メーベルク氏と、ヴァガード公共図書館館長のロー・クレッソン氏をお迎えし、「メイカースペースと図書館サービス」をテーマにご講演いただきました。参加者は本学および他大学の司書課程受講生を中心に、一般の方を含む75名(本学学生37名、一般その他38名)にのぼり、本学司書課程・司書教諭課程の三浦太郎氏の開会挨拶ののち、おふたりの発表に移りました。

       

まずクレッソン氏から、ヴァガード図書館とヘスレホルム図書館についての紹介があった後、スウェーデンの図書館においてメイカースペースがどのようにして誕生し、発展してきたのか、歴史的な経緯について説明がありました。その後、それぞれの図書館におけるメイカースペースの様子を、写真を交えながらご紹介いただき、メイカースペースに共通するツールとして3Dプリンターやレーザーカッター、ミシンや音響機器などさまざまな種類のロボットを挙げられました。

次にメーベルク氏から、ヘスレホルム図書館とヴァガード図書館での図書館計画の際に参考にしたデンマークの「四空間モデル」について説明がありました。「四空間モデル」は、図書館が利用者に提供する探究、体験、参加、創作の4つの機会を示しており、インスピレーションルーム、ラーニングルーム、ミーティングスペース、パフォーマンスルーム(クリエイティブルーム)から構成される図書館全体のモデルでもあります。それぞれの部屋の機能が相互に作用する図書館こそが理想であり、これはメイカースペースにおいても同様である、と指摘されました。

また、現在、スウェーデンの図書館におけるメイカースペースでは、大人や起業家よりも子どもやヤングアダルトに焦点を当てているため、プログラミングやロボット工学に関するワークショップが多く開催されていることをお話しされました。学校においても、カリキュラムにプログラミングが導入されたことにより、メイカー関連の活動は増加傾向にあると説明され、このような状況の中で図書館は、「つながり、協力し合うことでコミュニティーの構築を支援することができる」と述べられました。

講演後の質疑応答では、「これまでの図書館の枠を越えた取組の中で、求められる図書館員のあるべき姿はどのようなものか」「多くの資料がある図書館という場所で、どのようにメイカースペースのための空間を作ったのか」など、講演内容をより深化させた質問が寄せられました。今回の講演でメイカースペースに関する具体的な取組について伺うことができ、日本での積極的な導入についても深く考える機会となったのではないでしょうか。ご講演者の方々をはじめ、参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

文責:松野 南紗恵(明治大学大学院)

シンポジウム 本学卒業生が語る図書館のしごと

       

2019年12月14日(土)、明治大学和泉キャンパスメディア棟において、「本学卒業生が語る図書館のしごと」と題するシンポジウムを開催いたしました。 参加者は本学の司書課程受講生を中心に45名にのぼりました。シンポジストには、東京大学附属図書館の塚本麻衣子氏、荒川区立中央図書館ゆいの森あらかわの大坪秀嵩氏、そして同志社香里中学校・高等学校の柳井孝太氏をお招きし、本研究会会長の阪田蓉子氏の開会挨拶ののち、御三方にご講演いただきました。

塚本氏は「東京大学付属図書館のお仕事」と題し、まず、東京大学附属図書館全体の概要について紹介されました。その後、実際に勤務された柏図書館と数理科学研究科図書室における仕事について、その内容と工夫している点などについて詳細に説明されました。最後に、「図書館の仕事は想像以上に多種多様であり、毎日のように新しい発見も多く刺激的である」と述べられました。

続いて大坪氏は、「公共図書館における司書の立場と仕事、そしてやりがいについて。」と題し、自己紹介の後、指定管理者制度等により、さまざまな立場の職員が公共図書館で勤務している現状について説明されました。その後、実際に行ったことがある業務を挙げ、多くのことを同時並行で進めていく特徴があると述べられました。また最後に、図書館員としてのやりがいについても触れ、レファレンス業務等では利用者の「伴走」として共に課題解決に取り組み、知識を深めていくことができることも魅力の一つであると語られました。

柳井氏は、「学校図書館の1日」と題し、学校の概要や自身の勤務する図書館について写真等を交えながら説明されました。さらに、実際の学校図書館での1日を紹介され、日常業務の中で感じている課題として選書や学内でのPR、「司書」と「教諭」の両立などを挙げ、それぞれへの取り組みについて語られました。最後に、司書教諭や司書の採用状況についても触れ、「司書と共に教員免許や司書教諭も取得したことが良かった」と述べられました。

講演後の質疑応答では、これからの図書館の方向性や、求められるサービスが多様化する中で図書館員に必要だと思われるスキルなど、講演内容をより深化させた質問が寄せられました。今回の講演を通して、学生たちは3つの館種の現状について学び、多種多様な司書や図書館員の役割について深く考える機会となったのではないでしょうか。ご講演者の方々をはじめ、参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

文責:松野 南紗恵(明治大学大学院)

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